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北岡秀一(30)(きたおかしゅういち)
職業:弁護士
大事なもの:家族。(中でも、末弟)




幼い頃、いきなり両親が他界。
親しい親戚も居なかったため、幼い弟達と共に、児童施設へと預けられた。
両親を求めて泣き続ける弟たちを守らなければ、と小さい頃から感じていた。
しかし、現実は甘くはない。
高校生になる春。
施設の決まりで、義務教育が終わると卒園しなければいけなかった。
それと同時に上がった、弟達への里親候補。
兄弟4人を一緒に、せめて下の弟達3人一緒に、迎え入れてくれる家族を施設の人たちも一生懸命に探してくれたが、やはり経済的にそうはいかなかったそうだ。
そして、兄弟は離れ離れにそれぞれの里親の下に。
その中で、一番下の弟は、里親の都合で渡米。
いつ戻れるのかは分からないと聞かされた。

どれ程、自分の無力さを呪っただろうか。
何故、自分には経済的力がないのだろう?
自分では家族さえ支えることが出来ない。
己の手を強く握り締め、ただただ耐えるしかなかった。

一人っきりのアパートでの部屋。
家具といったものは無く、あるのは布団と備え付けの靴棚。
その上に飾られている、兄弟4人で取った1枚の写真。



高校へ上がってから、常に学年トップを勤め、生徒会代表等、色々な仕事をしてきた。
勿論、金がなければ生活は出来ない。
そのため、バイトもした。
兎に角、寂しさを紛らわせることが今の自分には必要だったのだ。
直ぐ下の威、その下の海之とは月に1度は会うことにしていた。
貰われていった家族はとても良い人たちで、出来るだけ兄弟を合わせようと勤めてくれた。
3人で話すのはとても楽しかったが、3人で集まると逆に真司が居ないことを実感し、余計にさびしくなった。

そして、司法の有名な大学にストレートで入学。
大学でも常に学年上位をキープし、特待生制度等を使って出来るだけ消費を押さえたり。
そんななか、ようやく知り合いから買った中古のパソコン。
アパートの部屋は、前の住人がパソコンを持っていたらしく、インターネットの配線工事は既にしてあり、そのままプロバイダー契約を済ませ、メールを出来るようにした。


自分のメールアドレスを書きするした手紙を、何度か書いた住所にエアメールで送る。

そして、数週間後。
今まで0通と表示されていた画面に、1通のメールが届いた。
それが幼くして離れ離れになった末弟からのメールだった。
それから始まった文通。
そして誓った。




「俺は絶対に弁護士になってやる。それで大金持ちになってやる。そして、今度こそ兄弟4人で一緒に暮らすんだ」












それから数年。
晴れて司法試験を合格し、修行のため勤めていた弁護士事務所から独立し、新たに自分の弁護士事務所を開いた。

『北岡弁護士事務所』

一人で切り盛りするも、流石に辛く手伝いを雇うものの、なにやらすっごいドジな子だったが ・・・・何故かとても強いので、暫く雇っていたのだが、流石に限界を感じ、やめてもらった。
変わりに雇った秘書は、料理が美味く、スケジュール調整も申し分ない。
数々の仕事をこなしていき、徐々に高まる名声。
そうやって、徐々に溜まる貯金額。
まだ目標値には言ってないものの、夢まであともう一押しだ。

そんな時、PCのメールをチェックしていると、

「・・・なんだって?」

1通のメールに目が釘付けになった。



配信者:Shinji Kido

To.Shuichi Kitaoka

『秀兄へ。元気ですか?俺は元気です。この間、近所の友達とキャンプに行ってきました。

 じゃなくて、いやそうなんだけど。今日は大ニュースがあります。

 俺、大学卒業した後の就職先が日本に決まりました!!

 場所は東京で、OREジャーナルっていう携帯電話を主としたインターネットでのニュース配信を仕事にしてる会社です。 

 確か秀兄も東京に事務所構えてるって言ってたけど、近いのかな?遠いのかな?

 兎に角、今度の4月に帰ります。久々にみんなに会うのを楽しみにしてます!!

追伸

 キャンプ行った時、農蜂園の手伝いをして、お土産に蜂蜜をもらったので、送ります。』





「真司が帰ってくる・・・?」

どれ程待ち望んだだろうか?
兄弟が皆で集まれる時を。

「先生?」

画面を見たまま、固まっている北岡を心配し秘書は声をかけるが返事が無い。
変に思い、今度は近くによって再び呼んでみると、今度はぴくっと小さく反応しいきなり、


「よっしゃぁあああ!!!!」


がばっと立ち上がり、握りこぶしでガッツポーズをする北岡に、唖然の由良。

「ごろちゃん!!」
「は、はい!」
「帰って来るんだよ!!!」
「え?」
「帰って来るんだよ!!!真司が!!!俺の、弟が!!!!」
「それって・・・」

北岡の素性を聞かされて知っていた由良は目を見開いた。
幼い頃に分かれて、そのまま渡米した弟がいると。

「おめでとうございます!!!」
「ありがとう!!!」

その日、他の2人の兄弟にもこの朗報は伝えられたのだった。















後日。

「海之」
「どうしたんだ秀兄?」

場所は東京駅近くの喫茶店。

「真司の勤め先、大丈夫か?」

兄として、まぁ、普通の心配。

「大丈夫だ。まぁ、少々不安定ではあるが真司が行くには申し分ない」
「そうか・・・」

ほっと安心したように息を吐き、コーヒーを一口飲む。

「所で秀兄」
「ん?」
「秀兄は、急いで引っ越した方が良いという占い結果が今朝、出たんだが」
「引越し・・・?何処によ」
「東京の静かな高級住宅街の一角」
「・・・間取りは?」
「縦長の間取りで、1階はぶち抜きのフロア。そして、2階に2部屋10畳と8畳、トイレ、風呂、3階に3部屋それぞれ6畳、それから屋上と庭付き一戸建て、日当たり良好」
「・・・・」
「そこで、この先真司に関する何かに関わると出ている」
「何なのよ、何かって」
「まだ其処までは分からない。だが、引っ越した方が良いのは本当だ」
「うーん・・・・お前の占いは聞かないと後が怖いんだよね・・・」

しかし、引越しか・・・と、少し悩む北岡。
大事な弟に関する何かに関わるのなら・・・しかし、いきなり引越ししても・・・既に1年間の家賃を先払いしてしまっている。

「家賃なら大丈夫だ」
「え?」
「今日のうち、全額払い戻しされる」




事務所に戻ると、秘書が慌ててやってきた。

「大変です先生!!」
「ど、どうしたのごろちゃん?」
「このビル耐震偽造が発覚したそうです!!その上、1階には既に大きなヒビが何箇所も!!」
「何だって!?」

良心的な大家は家賃を全額払い戻ししてくれた。
このビルは即潰してアパートを立てる予定だそうだ。
つまり、商業関係は出て行かなければならない。

「これか・・・・」

昼間に会った弟との会話がひしひしと体に伝わってくる。

「どうしましょう先生・・・直ぐに移転先を探さないと」

しかし、いきなり明日から場所を貸してくださいといっても、それは少し、いやかなり無理な話だ。
これから不動産見てきますと、出て行こうとしたとき、

「大丈夫だよごろちゃん」
「けど、先生」
「良い物件があるんだ」
「え?」




その後、手塚の紹介で明日からでも直ぐに引越しできる、例の家に引っ越すことにした。
弟ながら末恐ろしいヤツ。
苦笑をしながら、そんなことを呟いていた。








そして、城戸が帰国、アトリに入り浸るようになる。

「なぁ、海之」
「何だ?」

場所は北岡弁護士事務所。
仕事部屋である1階のフロア。お互いソファーに腰掛け、入れてもらったコーヒーを飲んでいる。

「お前が言ってた、真司に関することって、やっぱりあそこのあいつの事か?」
「ああ、そうだ。中々いい場所だろ?」
「・・・・まぁな」

アトリから歩いて15分〜20分。
そこに北岡弁護士事務所はあったのだった。







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何かあったらすぐさまお兄さんが行きます弁護士事務所。
アトリに勤めている秋山さんを見張る役になった北岡弁護士。
何かあったら直ぐに動けます。
クライアントなんて二の次だ。
弟守りに地球の裏にだっていくんだ兄達よ。
悪い奴からまもるためぇ〜♪



秋山氏監視準備完了(笑)












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