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浅倉威(25)(あさくらたけし)
職業:探偵兼事務所所長
大切なもの:末弟







東京駅から程近く。車の通りも人通りも多い街の中。
少し古く、だが小奇麗な雑居ビルの中にそれは――『浅倉探偵事務所』はあった。

従業員数5人。実質活動員5人。
つまり、所長やら会計事務やら関係なしに、みんな探偵として働く小さな事務所。
そこの一番奥の大き目の机に眠たそうに、事務机に突っ伏す四人兄弟、次男 浅倉威。

この事務所は最近引っ越したらしく、事務所の中は今だ手付かずのダンボールが壁際に積んであった。

「勝手に片付けろ」

所長の号令の下、従業員達はさっさと勝手に片付ける。

只今の時間、普通の会社にしては少し早い7時半。
どうやら、従業員は今日中に通常の仕事に戻れるようにしたいらしく、朝早くから頑張っているようだ。
所長である浅倉は未だ机の住人と化しているが、毎度のことらしく従業員たちは気にせずせっせか片付けている。




そうこうしているうちに、時間は8時50分。
車の走る音の中に、スクーターのエンジン音が小さく混じって聞こえてきた。


パチ。


と、それと同時に起きた所長。
そのまま窓へと近づくと窓越しから下を見やっている。
その顔はどこか獲物を見つめる蛇の様でもあるが・・・・・

「あ、真司君着たんですか?」
「今日は遅刻じゃなったな」
「おー、あと10分か。週明けの月曜にしては快挙だな」
「あ〜・・・今日の天丼、かけてたのにぃ〜」

と、所内から聞こえてきた台詞。
一瞬だけ、しゃべりながらも手を止めない従業員へと所長の視線が動いたが、そのまま事務机に戻る所長。
そのまま再び眠るのかと思いきや、そのまま仕事をし始める。

その様子を一部始終見ていた従業員は再び話し始める。

「真司君、もう少し早く来ないかしら」
「どうでしょうね・・・、結構遅刻魔らしいですけど」
「ここに引っ越してから一勝三敗か・・・?」
「というよりかは、城戸さんが出社したのを確認してから仕事をし始める所長に問題があるんじゃないですかね?」

そう。浅倉威は弟の出社を確認すると仕事をし始めているのである。

「まぁ、しょうがないんじゃないか?その弟さんを見るために、引っ越してきたんだから」

実は、この浅倉探偵順所の場所。
城戸真司が勤める“OREジャーナル”の入っている雑居ビルから、車道を挟んだ向かい側の雑居ビルの中にあったりした。

「本当は同じビルの中が良かったらしいんだけど・・・」
「ちょうど空いてなかったのよねぇ」
「これでも、一番近い場所を占ってもらったって話じゃないか」
「そうそう。でも、すごいっすよねー所長の直ぐ下の弟さん」

従業員達は話してはいるが、きちんと片付けてもいる。

「何でも、一週間山篭りしてまで占ったとか」
「そこまでしたんだ!」
「でも、そこまで占っても、ここしか一番近い場所が取れなかったというのも・・・」
「なんだかですねえ・・・」

何処からともなく、「あーあ、所長可愛そうに」と聞こえてきたが、その当の所長は気にせずに書類の処理をしていく。

「まぁ、それでも何とかお向かいさんには、なれたわけだし」
「そうだよな。なんせ昼飯は大抵一緒だし」
「お向かいさんでも、引っ越してきた甲斐はあったってわけですか」
「よかったですねぇー所長」

所長の鶴の一声で左右上下全てが決まる探偵事務所。
もう既に、従業員達の頭から、弟の近くに居たいからという理由で“引越し”を命じた浅倉の言動にたいして文句も出ない。

つまり。



「ま、どれもこれも、何時ものことなんだし」
「そうなんですよね〜」





毎度のことなのである。














<おまけ>





城戸の帰国三日前。



「おい、海之」
「どうかしたのか?」
「真司の勤め先は何処何だ?」
「確か・・・・東京都××区××××3丁目9番地○△ビルだ」

城戸真司帰国、次の日。

「お前に仕事を頼みたい」
「内容は?」
「真司の仕事場に一番近く、且つ良い場所を探せ」
「探偵業のほうが見つけやすいのでは?」
「無理だった」
「分かった」

山篭り中。

「威兄」
「どうだ?」
「明日の正午、35分42秒に、駅前の駅ビル1階にある不動産屋、入り口から入って右から2番目のカウンターだ。ラッキーアイテムは紅い万年筆、ゴム印つき」

差し出された紅い万年筆。

「よし」

出された万年筆を受け取り、小さく頷いた浅倉威。



















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この事務所は、きっと経営安定しているんでしょうね。
こんな従業員達がいるんですもの・・・・。

一週間、山篭りしてまでの占いとはいったいどういった占いなのでしょう・・・?

また、秋山氏が近づける要素が消えたな。










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