Cat.8







本日は晴天なり。
そのため、アトリには何時も以上の客が出入りしていた。

「いらっしゃいませ!!」
「ご注文は何になさいますか?」
「ありがとう御座いました」

何時も増して、てんやわんやな状態である。



「あ〜・・・疲れた〜・・・・」
「私も・・・」
「俺も・・・・」
「・・・・・はぁ・・・」

カウンターに突っ伏す俺とユイちゃんとおばさん。カウンターの椅子に座って、近くの壁にもたれかかり目を瞑る蓮。
きっと今モンスターが出ても思うように戦えないのではないだろうか?
そんな不吉な考えが俺の頭に浮かんでいた。

「あ〜・・・年寄りには疲れるわ・・・。ってなことで、あんた達。後はお願いね」
「え!?」
「ちょっ!!」
「・・・(ジロリ)」
「だってぇ〜・・・疲れちゃったんだものぉ〜。あんた達、年上は尊敬するもんよぉ〜」

いや、言っていることの意味が違ってますから。

「ずるいよおばさん!!」
「いいじゃないのよぉ。もうピーク時は過ぎたんだから。あんた達だけでも十分やってけるわよ」

それだけ言うと、さっさと階段を上って行ってしまったおばさんは、瞬く間に階段を下りてきた。しかも、着替えて。

「じゃ!私は出かけてくるから!」
「ちょっと!!」
「おばさん!!」
「店主だろうが!」

俺達の批難を何処吹く風に流しさって、そのままおばさんは出かけていってしまった。
唖然とする俺達。


「あ〜もう!!おばさんは何時も勝手なんだから!!」

そして、俺と蓮以上に憤慨するユイちゃん。

「真司君!!」
「はいっ!!」

その勢いのまま振り向いたユイちゃんは俺のことを「ビシィイ!!」と、音がするほどに勢いよく指を刺してきた。

「猫になって」
「・・・・え?」
「猫になって」

今はアトリの手伝いをしている。
猫になると言うことは、今着ている服が全て脱げてしまうため、また人間に戻ることはちょっくら困難になる。

「真司君」

でも、ユイちゃんのためにこうなってんだから、仕方ないか。
と、言いますか・・・これはもう拒否権を与えないという目だ。
逆らったら逆に恐ろしかろう・・・・。

「分かったよ。じゃぁちょっと部屋に行ってくるね」

何せ、猫になると服が脱げる上、下着まで脱げるのだ。いくら知り合いでも――いや、知り合いだからこそ、その人の前で猫になるのは抵抗がある。
因みに、俺が階段を上ると蓮もついてくる。

「何でお前も来るの?」
「ユイに、首輪を取ってくるよう頼まれた」
「・・・さいですか」

どうやら、今日のユイちゃんは可なりのご立腹のようである。



「ユイちゃーん!」

今日は薄緑でチェック柄の首輪。
何だか、日を追うごとに首輪の数も増えていっている気がする。最初は赤と蒼の2本だったのだが、今では10を超える数となっている、
俺は階段を下りユイちゃんの下まで駆け寄ると、そのまま抱き上げられた。

「あ〜・・・やっぱり和む」

椅子に座ったユイちゃんの腕の中。俺は大人しく抱かれるまま。
蓮はユイちゃんと自分用に紅茶を入れている。

「はぁ〜・・・」

どうやら、少し機嫌が良くなった様子だ。

「ユイ」

首輪を取りに行った後、店の調理場に消えていた蓮が戻ってきて、ユイちゃんの前に入れ立ての紅茶を置いた。
その横に腰をかけ、自分用に入れた紅茶を置く。

「俺のは?」
「お前は飲めないだろうが」

・・・・。
そういやー以前猫の姿で紅茶を飲もうとしたら、すんごく熱くて舌を火傷したんだったっけ。

「俺も何か飲みたい」
「自分で入れろ」
「出来ないから言ってんじゃんか!!」
「蓮!真司君に意地悪しないで!」
「・・・・・・・」

ユイちゃんは、俺の蓮に対する怒りで膨れ上がった毛並みを撫でながら蓮に俺用のミルクを持ってくるように言いつける。
蓮がテーブルを離れる時、一瞬こちらをみやった。
その目が・・・

『覚えていろ』

と、確実に語っていたのは、気のせいと言うことにしておこう・・・・・・。

俺の前に、深めの更に入った猫用ミルク。
普通の牛乳でも大丈夫だと思うのだが、いかせん蓮がそれを許さない。
まだ、猫の体内構造であることを信じているようだ。
まぁ、猫ミルクもそう悪いものではないから文句は無いが。
だがしかし、飲みにくい。
猫に成り立て早4日。どうも猫の姿で飲み物を飲むことに馴れてないでいる。まだ、フードの方が食べやすい。
どうも舌が疲れるのだ。そのためストローでチャレンジをしたのだが、そちらも上手くいかなかった。
結局、猫はこの飲み方が一番飲みやすいのかもしれない。

「皿の外に飛ばすな」
「・・・スミマセン!」
「何度言えばお前の頭は吸収するんだ?」
「悪かったな!!鳥頭で!」

再び始まった口喧嘩にユイちゃんが仲裁にはいろうとした矢先、


「へぇ〜・・・面白い事になってんじゃん・・・・」


「「「!!??」」」

店の入口には、扉を開けた北岡さんが立っていた。





「へぇ〜、あのカンザキがね〜。あ、なんちゃらやま。ダージリンファーストフラッシュで」
「金は払えよ」
「払うに決まってるだろうが!」

俺はユイちゃんの腕の中。
テーブル越しには北岡さん。

「でも、これまた随分と可愛らしくなっちゃったじゃないの城戸」
「まぁね」
「ちょっと、こっち来ない?」

そう言って、差し出された腕。それをみてユイちゃんを見上げると、「いいんじゃない?」と言って俺をテーブルに乗っけてくれた。
そのまま北岡さんのところまでてくてく歩いていくと、

「ダージリンのファーストフラッシュだ」

俺と北岡さんの間を遮るかのように置かれた紅茶。

「ついでに、コイツには近づくな」
「おわ!?」

俺は蓮に首根っこをつかまれ持ち上げられると、そのままギャルソンエプロンにあるポケットに入れられた。

「蓮・・・・?」
「秋山・・・・?」

唖然とするユイちゃんと北岡さんと・・・・

「・・・・蓮?」

俺。








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北岡氏登場。
他にも、浅倉やら何やら。出せたらいいなー。
北岡氏に抱っこされる城戸を見たくなかった秋山氏。(笑)