Cat.6






手塚君の腕の中でごろごろとしてること20分ほど。
ようやく蓮が帰ってきた。何やらその手には缶詰の詰まった袋が握られている。

「お帰りなさい蓮」
「ああ」
「邪魔してるぞ秋山」

ユイちゃんに返事をすると、蓮は手塚君を見た。
そして、その腕の中に居る俺を見ると何やら眉間に皺がよった。
そして、次の瞬間に俺は空中にいた。
正確には、蓮が俺の首根っこを掴んで持ち上げていただけなのだが。

「ちょっ離せよ!!」
「煩い」

煩いといいながらも、俺を離そうとしない蓮。
手足を必死にばたつかせてコレでも頑張って抵抗をしているつもりなんだけど・・・何だか全然通じていない。
そんな俺を一先ず置いておく事にしたらしいユイちゃんは、蓮が持っている袋を不思議そうに覗き込む。

「ところで蓮。その袋の中は?」
「・・・コイツの餌だ」

餌?
餌って餌だよな?
暴れていた俺は動かしていた手足を止めてぽかんと蓮を見上げて考える。
ユイちゃんも同じだったのか俺と同じようにぽかんと蓮を見上げている。
ただ、手塚君だけが俯いて小さく肩を揺らしていた。


蓮・・・俺、人間だよ・・・・・・?











「まぁ、これはこれで食べればいいじゃないか」

蓮が買ってきた猫カン。
すんごく種類が多い。ざっと見ても30以上じゃないだろうか。
結構重かったんだろうな。
じゃなくて。
蓮が言うには猫の姿ということは体内構造も猫になっていると思われる。そうだった場合は人間用の飯には毒になってしまうものも含まれる。(葱類とかにんに くとか)
もし食べてしまって病院騒ぎになっても困る。そのために、近所の大型スーパーに行って片っ端から買ってきたんだそうだ。

「蓮の言いたいことは分かるけど」

と、ユイちゃん。

「いささか、コレは買い過ぎじゃないか・・・?」

と、手塚君。
俺はテーブルの上に座ってる。そして、目の前にはピラミッドのごとく積み上げられた猫カンの山。
今の俺の身長さえ軽々と越えてしまう高さと数だ。
こんな風に猫カンを見上げる日が来るとは思わなかったなぁ〜。
暫く見上げていた首が痛くなり、ちょっと下を見る。
すると、視界に入ってくる缶のラベル。
何々?『マグロ風味』?こっちは・・・『鳥のささ身とチーズ』。ふむふむ、『海の幸グルメ』。
へぇ〜猫って結構グルメなんだ。やっぱり猫だからか魚タイプが多いような感じだ。
そう考えながら次々に見ていくと・・・
・・・・・・・・・・・・・『真鯛の鶏がら風味』。

「蓮!!」
「何だ?」

俺は今見つけた銘柄の缶詰を前足でしっかりと指しながら蓮を呼んだ。

「コレ!!コレ食いたい!!」
「どれどれ?」

俺の横にきたユイちゃんは俺が指していた缶詰を手に取り、品名を見る。

「なんか、すっごく豪華そう・・・」
「でしょでしょ!!」
「そういえば、もうすぐ昼だな」
「丁度いいかもね」

そして、

「はい。お待たせ真司君」

そう言って、俺の前には先ほどの缶詰が美味しそうに解され盛られたお皿が。
その他のメンバーは昨日の夕飯のカレー。カレーって次の日が美味いんだよねー。
因みにちゃっかりと手塚君もいる。
俺の鼻には美味しそうな匂いが漂う。あ、涎が垂れそう・・・。慌てて前足でぬぐう。

「じゃ、いただきまーす」

ユイちゃんの声に、蓮は手を会わせ、手塚君は同じく頂きますという。
俺も、ユイちゃんにあわせて言うと慎重に最初の一口を口に含んだ。
皆の視線が俺に集中する。

はむはむ・・・・

「どう?真司君?」

はむはむ・・・・

「美味いか?城戸」

ん〜・・・・

「美味しい・・・ことは、美味しい」
「どういうことだ?」

聞いてくる蓮。
不思議そうにこちらをみやる手塚君とユイちゃん。

「ん〜・・・なんか、味が薄いというか、食材の味しかしないというか・・・」

そうなのだ。
匂いはものすごくいい。けど、味がしない。魚の味と鶏がらと思われる風味はする。
しかし、塩などの調味料類は一切しない。
まぁ、猫用だから仕方ないと言えば仕方ないのかも知れないが、普段から人間の食事をしていた俺には少し物足りない。

「・・・ちょっと、食べていい?」

俺の答えが意外だったのか、ユイちゃんはスプーン片手に聞いてくる。
俺は一つ頷いて、お皿をユイちゃんの方に押す。
スプーンで一掬いして、口に運ばれる。

「・・・・」
「どう?」

暫くの間。

「・・・確かに、人が食べるにはものすごく薄い・・・・」



結論。
猫用は美味しいけど味が薄い。





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城戸を溺愛する秋山氏を書きたかったんですが・・・;
(猫カンの量は秋山氏の愛に比例してるんですよ・・・)
書き直すほど何だか文章がばらばらになってしまう・・・・;
すみません;