Cat.
5
ペットショップから帰ってきた俺は、店のフロアの日がさんさんと当たる場所で、猫用のベッドと言うものでくつろいでいる。
因みに、蓮が買ってくれた。帰り際、入口付近にあったものをユイちゃんが気がついて、手にとって見てたのを蓮が横から見やり、なにやらレジへと戻っていっ
た。そうして暫くして戻ってきた蓮の手には猫用のベッドが入った紙袋が。
珍しいとは思ったのだが、何か言うと気が変わりそうだったのでやめといた。
内心、ちょっとねっころがって見たかったので、蓮には感謝だ。
ふかふかで、横になっても体が痛くなるようなことは無い。
結構、猫のベッドと言うのも贅沢なつくりになっているようだ。
因みに蓮は先ほど何か用があるのか外へと出て行った。
「真司君、どう?」
「ふかふかしてて気持ちいよ」
ごろりごろり。
真新しい感触に俺は気持ちよく、何度も寝返りを打つ。
そんな折、
「真司君♪」
「?」
ぱたぱたぱた。
ふさふさふさ。
ユイちゃんの言葉とともに俺の前で振られている“猫じゃらし”。
ぱたぱたぱた。
ふさふさふさ・・・・・ばしっっっ!!!
思わず手が出てしまった。
お、俺何してるんだ?
ぱたぱ・・・ばしっっっっ!!!
ふさふさ・・・ばしっっっ!!!
「真司君、可愛い〜♪」
喜んでいるユイちゃんの声は聞こえていない。
とにかく、目の前で振られているソレをどうにかして捕まえてやろうとしか俺の頭の中には無かった。
そして、
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・・」
なんか、ライダーバトルよりも疲れたかも・・・・
猫ってすげー・・・・色んな意味で・・・
疲れた俺をそっと撫でてくれたユイちゃんは、そのまま何かを取りに店の奥へと入っていった。
世の中の猫はこんなにも疲れるのだろうか?
俺はそんな疑問を浮かべながらも体を休めていると、ユイちゃんが何か小さい袋を持って戻ってきた。
「疲れたときは甘い物がいいかなって思って」
中に入っているのは数枚のビスケット。
「本当の猫とか犬とかには、甘いものいけないって言うけど、真司君は人間だし大丈夫かなって」
そういって、小さく折ってくれたビスケット。俺は一かけ口に頬張り租借。
うん。やっぱし猫でいても、人間でいても美味しいのは美味しいんだ。
そう感心しながらユイちゃんの手からもう一かけビスケットを頬張る。
そこに、
カラン・・・
来客を告げるベルが鳴った。
あれ、今日はお休みだったのでは・・・?
確か店のプレートをCLOSEにしておいた気がしたのだが・・・?
俺とユイちゃんは慌ててそちらに顔を向けると、
「・・・手塚さん」
扉を開いた人物はメットを持ったままの手塚君で、その顔はどこか真剣な色を含んでいた。
ユイちゃんは立ち上がり、手塚君に近寄ると、
「城戸は・・・!?城戸はどこだ!?」
「へっ!?」
手塚君は、慌てながらユイちゃんの肩に両手を置いた。
「今日の占いで、城戸に何かが起こると出ていた。それが吉なのか凶なのかは分からない。だが、城戸に何かが起こる!教えてくれ!城戸は一体どこ
に・・・!!」
なるほど。
詰まりは、本日の占いで、俺に何かが起きると出た手塚君はそのままアトリに来てくれたらしい。
「え・・・えと・・・」
対するユイちゃんは、俺のことを何て説明すれば良いものかすごく悩んでいるようだった。
うん、そうだよね。俺だって悩むもん。じゃなくて、悩めよ俺。
どうしよう、手塚君にそのまま素直に告げたほうがいいのだろうか?
視線を合わせ、どうしようかと目で話す俺とユイちゃん。
そんなやり取りに気づいたらしい、手塚君はこちらを向いた。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・まさか・・・・・」
「・・・・・・・・;」
「・・・・・城戸・・・か?」
「・・・あ、・・・・・ども」
そして、
「なるほど。カンザキシロウが・・・」
「そうなんだよ〜」
俺は手塚君の腕に抱かれ、喉をゴロゴロと鳴らしながら話していた。
手塚君は、占いを本業にしている所為なのか何なのか、怪奇現象にそう驚く人間ではないようだ。
現に、俺が「ども」と言ったら、素直に俺だと認めてくれ、なんら否定するようなことは言わなかった。
すごいな〜手塚君。まぁ、ライダーやってればそれも普通なのかなと思えてくることも無いが。
それから、手塚君は猫や犬とかの相手になれているらしく、ペットショップの店員並みに、撫でるのが上手かった。
「だが、城戸のこんな姿を見たら秋山は黙っていないだろう」
「へ?」
「そうなんだよ、手塚さん。さっき真司君がいた猫用のベッドも蓮が買ってくれたんだから」
ユイちゃんの言葉に、手塚君は先ほどまで俺が寝転んでいた猫用のベッドに視線を向け、納得したように頷いた。
「なるほど。さすがは秋山だな」
「でしょ?」
「何が・・・・?」
二人だけで何かを納得している。
「城戸の毛色を考え、尚且つ城戸が長毛種であることも考慮してるな」
「そうなんだよね。あれ、店頭に並んでなかったんだもん」
「・・・そうなの?」
「城戸、これは結構高いタイプだぞ?」
「真司君、愛されてるよね〜」
なんと言ったらよいのやら。
ユイちゃんが言うには、俺が寝ていた猫用ベッドは本当は店頭に並んでいなかった商品らしい。
店頭にあったベッドを見て、蓮はレジの人に違うタイプは無いかと掛け合ったらしい。
そして、その中でもかなりの高いランクの物を選んで、キャッシュ払いしてきたらしいのだ。
知らなかった・・・・
まぁ、一先ずベッドの件は蓮が帰ってきたらきちんとお礼を言うことにしよう。
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