Cat 4.
「ねぇ、蓮。今の真司君って生後何ヶ月ぐらいなんだろう?」
生後・・・・・
「そうだな・・・・4,5ヶ月ぐらい・・・いや、3ヶ月じゃないか?」
生まれて3ヶ月・・・・
只今、仮面ライダー龍騎こと城戸真司である俺は、子猫の姿でユイちゃんの腕に抱き上げられている。
場所はアトリのカウンター。今日はおばさんの気まぐれで休日である。
ユイちゃんは予想通り、俺の姿を見て驚いたけれど、喜んでくれた。
一先ず、其処までは俺も嬉しいのだが・・・・
生後3ヶ月か・・・・生まれてこの方20年と少し。まさか、そこまで若返るとは思いもしなかったな・・・・
「真司君、色は何がいい?」
「へ?」
思わず遠い目をしていた俺はユイちゃんの言葉に、慌てて顔をそちらに向けた。
色?何の色だ?俺、今薄茶だし。
「首輪だ」
「えぇ!?」
「だって、折角可愛いんだもん」
もん、じゃなくて・・・
首輪・・・・そういえば、そうだよな。
首輪をするのは当たり前・・・って程ではないけど(特に猫は)、基本だよな。
「やっぱ、赤がいいかな?」
「コイツの毛色だったら、スカイブルーも映えるぞ?」
勝手に話が進んでいく。
「真司君は何色がいい?」
「何色って言われても・・・」
まさか、自分で首輪をはめることになるとは思いもしなかったから・・・・
はて、何色がいいか・・・・
「でもさ、どんな首輪があるの?」
今のペット業界はかーなり、奥が深い。
ペットのご飯も、人間が食べたって大丈夫って思えるどころか、人間のご飯みたいな餌が出されるご時勢。
あ、そういえば、一度食べてみたいなーって思ってたんだっけ。
ま、何にせよ。すごく手がこっているのだ。
「そういえば、どんなのがあるんだろう?」
真司の問いかけに、少女と秋山は、淡色の首輪しか考えていなかったのかふと思案気に視線を動かした。
「あ!じゃぁ今から見に行こうよ!!」
「え?」
「?」
「ほら、駅に行く途中に、ペットショップが出来たじゃない!あそこはグッズも沢山あるって、お客さんが言ってたの!!」
「ああ、あそこか」
てなわけで、初めてのお出かけ先はペットショップ。
ま、いいんだけどね。ユイちゃんが喜んでくれるのであれば・・・・。
ハァ・・・・・。
「うわぁ〜!」
ペットショップ。生まれてこの方、一度も入ったことの無い店。
前を通過したことはあったんだけれど、ショーウィンドウ越しに中をちらりと見るだけだった。
まさか、俺自身のアイテムを買いに来るとは、思わなかった。
「へぇ〜色々あるんだ。首輪って」
猫用首輪の陳列棚。俺は相変わらず、ユイちゃんに抱っこされたまま。
蓮はユイちゃんの隣で同じように首輪を見ている。
「真司君どれがいい?」
「ん〜・・・・」
犬や猫の視覚って色の認識はなく、全てがモノクロらしいんだけど、俺は元が人間だったからか、視覚は今までどおりだった。
そして、棚にはこれでもかと言うほどに並べられた色とりどりの首輪の数。
淡色を始め、マーブル、水玉、リボン付、鈴付・・・etc
思いのほか沢山ある首輪に俺は少々驚いていた。
「蓮はどれがいいと思う?」
「そうだな・・・」
ユイちゃんの質問に、蓮は棚をさっと見回して、綺麗な蒼の首輪を手に取った。
「わ、綺麗な色」
「城戸、少しじっとしていろよ」
そういうと、蓮は俺の首にそれを宛がい、色の見た。
「これなら、コイツにも映えるな・・・・」
「じゃぁ、私は・・・・」
ユイちゃんも、蓮と同じように一つ、綺麗な緋色(鈴付)の首輪を手に取ると、俺の首に宛がった。
「これもいいな〜・・・」
「2つ買えばいい」
ってなわけで、猫デビューの証(?)である、首輪は全部で5本となった。
その日の気分で変えるのだそうで・・・・
レジにて。
「可愛い仔ですね♪」
ペットショップで働いている人って、やっぱ基本的に動物好きなんだと思う。
じゃなきゃ、働けないもんな。
今、俺の首輪のレジを売ってくれているお姉さんは、俺の姿を見ると優しい笑顔を向けてくれた。
「触っても、いいですか?」
ユイちゃんはそう言われると、俺をお姉さんに差し出した。
差し出された俺は、お姉さんに抱き上げられ、あやされるように、頭を撫でられたり顎を撫でられたり・・・・
気持ちぃ・・・・
動物を撫でることに慣れている所為か、店員の撫でる手はとても気持ちがよくて、ふにゃん、となった。
ゴロゴロゴロゴロ
グルグルグルグル
猫は、自分でゴロゴロと言ってるんじゃなくて、気持ち良かったりすると自然に出るものなのだと勉強した。
その後。
俺は再びユイちゃんの腕の中。
レジを済ませ、俺達は店の壁際にあるショーウィンドウを見ていた。
中には、子猫に仔犬、後鳥やハムスター等もいる。
「ねぇ、真司君」
「何?」
お店の人が近くにいないことを確認してから俺は返事をした。
「他の子達の言葉、分かる?」
素朴な疑問。
そういえば、そうだよな。俺、猫だし。
猫同士の言葉、分かっても不思議じゃないよな。
ユイちゃんの言葉に、俺はウィンドケースの中へと意識を集中させた。
ミャーミャーミャー
『お前誰?』
キャンキャン
『散歩行きたいよー』
ニャーニャー
『おかあさーん!!』
ワンワン!!
『変な人が来た!!』
「っぷ・・・・くくくく・・・・」
変な人・・・ある、仔犬が叫んだ先には、ウィンドケースの横にある棚へぎりぎりまで後退した蓮の姿。
「真司君?」
「あのね、ユイちゃん・・・・」
ごにょごにょごにょ・・・
「っぷ・・・あははは!」
「何を笑ってる・・・?」
犬にまで変人扱いされた蓮に、俺とユイちゃんは二人(一人と一匹)で暫く笑っていた。
仮説は確定。
俺は他の動物の言葉を理解することが出来る。
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