Cat 3.





何とかしつこく迫る蓮をやり過ごし、俺は脱げていた服を着込むと、一先ず1階へと降りた。

「あ、真司君、おはよう」
「あ、おはよう」

ユイちゃんは、少々元気は無いものの何時ものように挨拶をしてくれる。
さて、どう切り出せばいいものか・・・・
俺が悩んでいると、後からやってきた蓮が俺を追い越し、

「ユイ、食事の後時間あるか?」
「え?ご飯の後?・・・・特に、用は無いから大丈夫だよ?」
「そうか、なら後で部屋に来てくれ」
「うん分かった」

さっさと、話しを進めてくれる秋山さん。

――ここからはヒソヒソ話し。

『ちょっ!蓮!!』
『何だ?』
『何考えてんだよ!?』
『お前がさっさと話しをしないから進めてやったんだ。ありがたく思え』
『なっ!?』

そのままテーブルについてしまい、何も言えずにいる俺。
絶対さっきのこと恨んでやがるな・・・アイツ・・・・



そして、朝食が終わり片付けも終わり、俺と蓮、それからユイちゃんが今、俺達の部屋にいる。

「それで、どうしたの?2人とも」
「あ〜・・・うん・・・」
「さっさと、やれ」

いざ本人を目の前にしてみると、やりづらいと言うか、恥かしいと言うか・・・
さっさと行動に出さない俺に業を煮やしたのか蓮は俺の腕を掴むと、強引に姿見の前に立たせた。

「え、変身?」
「・・・ちょっち、似てるかな・・・・?」

俺はユイちゃんの方を振り返って、言った。

「早くやらんか」
「わーったよ!!えーっとね、これからユイちゃんに喜んでもらおうと思ってさ・・・」
「え?」
「俺と、一先ずカンザキからサプライズみたいな感じね?」
「お兄ちゃん?」
「じゃ、やります!!」

再び姿見に振り返り、俺は何時もと反対の腕を上げた。
そして、

「変身!!」

ぽん!

まるでコルクの栓が抜けるような音を聞きながら、俺は視線が一気に低くなるのを感じた。
そして、

「し・・・んじ、君?」
「え〜・・・あはは・・・」

やっぱ驚いてる。
うん、当たり前の反応だよな。

「カンザキが、近頃お前の元気がなくなっていると心配していた」
「それで・・・?」
「ああ」
「そういうこと」

俺は再び4本脚で、ユイちゃんの足元へとやってきた。

「これは、俺とカンザキから、ユイちゃんに。近頃元気、無かったからさ」
「真司君・・・・」

ユイちゃんは一度しゃがむと、そっと、俺を両手で優しく抱き上げてくれた。
お〜結構ユイちゃんの顔も大きいな〜。
自分が小さくなったため、他のものがやたら大きく見える。

「でも、どうやって元に戻るの?」

仕事は?モンスターは?と心配してくれる少女の前で、俺は先ほど猫になった変身ポーズを決めながら、説明した。
「なんかね、こうやって、ライダーになるときとは反対の腕を上げて、鏡の前で変身って言えば元に戻るんだよ」
「そう・・・なの?」

鏡がなければ元に戻ることも無いから、ユイちゃんの前で恥かしい格好をしなくてもすむ。
一先ず、一通り、俺がこうなった経由から猫になる方法、戻る方法、ライダーにもなれてしまうことを説明し終えると、ユイちゃんはまるで泣き出すかのような 笑みを浮かべた。

「ユ・ユイちゃん!?」
「どうした?!」
「ううん・・・何でもないの。・・・・嬉しいの」

そういって、けむくじゃらの俺にそっと頬を当てて少女は微笑んだ。

「真司君や、蓮や、お兄ちゃんが私のこと心配してくれていたのが・・・とても嬉しいの・・・ありがとう、二人とも・・・」
「うん。どういたしまして」

喜んでくれて、俺は一先ず安堵した。


しかし、


「じゃぁ、真司君。今日1日その格好ねv」
「えーっ!!」

少女は立ち直りが早かった。







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