Cat 2.
チュンチュンチュン・・・・
「ん〜・・・」
朝日がまぶしい。俺は掛かっている毛布を引き上げてもう少し惰眠をむさぼろうとした。
今日はお休み。昨日頑張ったから今日は休んでいいと、編集長に言われていた。
そして、うまい具合にアトリもお休み。
つまり、俺はゆっくり眠れる。
引っ張りあげようとした毛布は何故か上手くつかめない。
あれ?
不思議に思いながらも、未だ重い瞼を上げる気にならず、一生懸命毛布を掴もうと手を伸ばすが、やはり掴めない。
「なんなんだよぉ〜・・・・」
まだ眠っていたいのに・・・
俺は仕方なく目を開いた。
あれ?
「こんなに、天井高かったけ?」
見上げる天井は何時もより高い気がした。
もしかして、寝ボケて俺は床に落ちたのだろうか?
そう考え、あたりを見渡す。
「・・・・俺のベッドってこんなに大きかったっけ・・・?」
見渡すシーツの海。
何時もだったら腕を伸ばせば端から端に届くはずが届かない。
それよりも、
「・・・何だこのけむくじゃらは・・・?」
視界に移る毛むくじゃら。犬や猫の手に似てるなーと思い浮かべ・・・・
まさか・・・
ふと、浮かんだのは夢の中に現れたカンザキシロウ。
『お前がユイを喜ばすんだ』
俺は慌てて起き上がる。
「おわぁ!?」
何時ものように足2本で立ち上がろうとしたとたん、後ろに倒れてしまった。
そして再び見上げた天井。
「・・・嘘だろ?」
もぞもぞと、体制と直し、座り込む。今の現状を確認すべく頭を動かす。
すると見える、茶色い毛色の長いしっぽや足。
恐る恐る腕を持ち上げて、頭に近づけると・・・
「あった・・・」
動物特有の三角型の耳。
暫し、呆然としていたが、このままでは拉致が空かないと、俺は隣のベッドを見た。
相変わらず早起きなのか何なのか。其処には既に蓮の姿は無かった。
ほっとしたような、しないような・・・・
どうしよう・・・・
途方にくれていた時。
キィイイン―――
「モンスター!?」
こんな時に!!
俺はあたりを見渡し、モンスターを探した。
そして、
『龍騎』
のわぁ!!
俺の横にあった携帯電話。
丁度電源を切っていたので、画面が真っ暗だったのだが・・・・
それが鏡になってしまっていたらしい。
其処に写っていたのは、今の現状の元凶である、
「カンザキぃ〜〜!!!」
『どうやら上手くいったようだな』
「何が『どうやら上手くいったようだな』だよ!!おい、こら、戻せ。さっさと戻しやがれ!!」
俺は携帯画面に向かって叫ぶが、カンザキは何時ものように済ました表情でどこ吹く風。
『言ったはずだ。お前が喜ばせろと』
「喜ばす前に驚かれるだろうが!!」
そうやって叫んでいると・・・・
「城戸!!」
「蓮!?」
勢いよく扉が開き、蓮が部屋の中に入ってきた。
そして、閉まっていたカーテンを思いっきり、シャッ!っと音を立てて開いた。
「・・・・・」
「・・・・・」
しばしば、唖然、呆然。
「で、どうなってるんだ・・・・?」
一先ずモンスターではなく、カンザキ来訪の音だったことを知った蓮は、俺のベッドに座り込み、携帯電話に写るカンザキへと問いかけた。
『城戸にはユイを喜ばせてもらう』
「それでは説明になっていない。何故、城戸が猫なんだ・・・?」
何気に、蓮は順応力が高いな〜などと、のんきに会話を聞いていた。
蓮が言うように、俺は子猫の姿となっていたのだ。
蓮が持ってきてくれた手鏡で自分の姿をまじまじとみた俺は、自分の姿ながら少々気に入ってしまったのだった。
薄茶の毛色の長い毛、くりっとしたアーモンド形の目は、酷く愛らしく、小さな体は庇護欲を駆られる。
『ユイが喜ぶだろう?』
「・・・否定は出来ないが・・・」
そういうと、蓮はこちらを見てきた。
「本当に、お前は城戸なのか?」
今度は、鏡を見ていた俺は首根っこを掴まれ、蓮の顔の高さまで持ち上げられた。
あ、首根っこって掴まれても痛くないんだ〜。
じゃなくて。
「俺だよ!!城戸真司だよ!!OREジャーナルに通勤してるジャーナリストの卵だよ!!」
一先ず自己主張。
俺の叫びに、蓮は眉間にしわを寄せ、布団の上に俺を放り投げた。
すると、俺の体は自然と落下にあわせ着地体制を取った。
お〜すっげ〜!!猫ってすんごい!!
じゃなくて。
「何すんだよ!!もっと優しくおろせ!!」
「煩い!お前は少し黙っていろ!!」
「き〜〜!!!」
起こった瞬間、体の毛がぶわっと膨らむのを感じた。
よく、猫が「フーッ!!」て唸るときに見られるあれだろうか?
ちらりとしっぽを見るとやはり、想像していたようにぶわっとしっぽが膨らんでいる。
すげー!!猫の毛ってこんな風に膨らむんだー!!
じゃなくて。
「カンザキシロウ!!これじゃあ仕事にいけないし変身だって出来ないんだぞ!!」
理由は知らないけれど、ライダーバトルはカンザキシロウにとって絶対に遂行しなくてはいけないものらしい。
このままでは俺はライダーの戦いに参加できない。それはカンザキにとっても困ったことではないのだろうか?
『大丈夫だ。鏡の前で、何時も変身しているときの反対の腕を伸ばして、変身といってみろ』
「・・・・?」
俺は訝しげにカンザキに視線をやり、一先ず、先ほど見ていた手鏡の前に座った。
何時もは左腕を伸ばして変身って言ってるから・・・
未だ不安に思いながらも反対の腕、つまり右腕を伸ばして、
「変身!」
ヒュンッ!
なにやら音がしたと思ったら、
「あれ・・・?」
視線がいきなり高くなった。
それに、蓮の顔が同じ高さになった・・・・
「も、戻ったー!!!」
『再び同じように、右腕で変身を唱えれば、猫に戻る』
「なるほど」
『因みに、猫の姿でもライダーになることは出来る』
「へ・・・・?あ、おい!!?」
そのままカンザキは姿を消してしまった。
ったく・・・・。ユイちゃんに何て言えばいいんだろう・・・・?
俺がそう考えていると、腹に何かが巻きついてくるのを感じた。
「・・・・蓮さん?」
「何だ?」
「何を・・・していらっしゃるのでしょうか・・・・?」
「お前が誘ってるから乗ってやっているだけだ」
「誰が誘ってるんだよ!!」
気がつけば俺は、素っ裸だった。
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