前日。

PM 6:00




赤ん坊がアトリに来たのは夕方。

その時はまだ大人しく寝ていた赤ん坊。


「ねぇ、真司君。名前はなんて言うの?」

直ぐにでも触りたいのだが、せっかく寝ているのを起こすのは忍びない。

ユイは気持ちをこらえ、一先ず名前を聞いた。

「名前は祥(しょう)。苗字は俺と一緒で、城戸。昨日でちょうど3ヶ月目だって」

赤ん坊を抱き上げる城戸はなんだか板についていた。

「祥ちゃんかい。可愛いこだねぇ〜」

「おばさん、そんなこんなで1日だけ、ご迷惑かけます」

「いいのよぉ。こんな可愛いんだから1週間でも1ヶ月でもOKするわよ!」

「あ、あと、蓮」

「何だ?」

「1日だけ、ちょっと迷惑かけるけどゴメンな?」

「3万」

「は?」

「借金に加算しておく」

そういってさっさと自室に引き上げた秋山。

階下では城戸が一瞬だけ怒鳴る声が聞こえた。

大方、ユイにでも口を押さえられたのだろう。




「何だよ。ったく蓮のやつ・・・」

「秋山は素直じゃないな」

「手塚君。手塚君にも迷惑かけるかもしれないけど・・・」

「いや、迷惑などかかりはしない。心配するな」

「へ?」

「こんなにも可愛いんだ。迷惑はむしろ喜びだ」

そういって城戸が抱いていた赤ん坊をそっと抱き上げた手塚。

「・・・・・・ありがとう、手塚君」



こうして、一先ず夕方と呼ばれる時間は過ぎていった。




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