PM 7:30
その日の夜。
夕飯の時間。
本日の夕飯担当、居候である秋山蓮と、こちらも同じく居候の手塚海之。
メニューは近所のスーパーで特価だったアスパラガスを使った、パスタ、サラダ、野菜炒め、トマトスープ。
「城戸を呼んでくる」
出来上がった夕飯の匂いにつられ、既に席に着いていたここの主とその姪っ子。
未だ上の自室にて本日預かった赤子の相手をしてるはずであろう城戸を手塚は呼んでくると一言延べ、階段を上った。
こんこん。
「城戸、夕飯が出来たぞ」
しーん。
「城戸?」
こんこん!
しーん。
「城戸?」
がちゃり。
今度はドアを開き中をうかがった。
城戸のベッドは珍しくカーテンが閉じられていた。
「城戸、開けるぞ」
シャッ!
「あ・・・・」
「・・・zzz・・・・・zzz・・・」
其処には寝ている赤子を壁側に置き、自分が外側で寝ていた城戸の姿があった。
その様子に、我知らず口元に笑みが浮かぶ。
「城戸・・・・」
城戸のベッドに空いていたスペースへ腰を下ろし、その髪を優しくかきあげる手塚。
「zzz・・・zzz・・・」
未だ規則正しく聞こえてくる寝息に、小さな誘惑が花を咲かせ・・・・
「・・・城戸・・・・」
そっと、手塚は身をかがめ、未だ眠りに着いている城戸へと徐々に近寄っていき・・・・・
「何している?」
「・・・・・・疲れて眠っている城戸を優しく労わりながら起こしてやろうか
と・・・・」
ごん!
「あれ・・・・?」
「ふに〜・・・・」
城戸と一緒に眠っていた赤ん坊、祥が目を覚ました。
「さっさと起きろ。夕飯だ」
「おはよう城戸」
「蓮?手塚君・・・?・・・って、手塚君、どうしたのその痛そうなたんこぶ」
「ああ、秋山の愛だ」
「えぇ〜///!?」
「下らんことを言ってるな!!!城戸、夕飯だ。さっさと降りて来い」
そういうとさっさと部屋を出て行く秋山。
無論手塚を引きずっていくことを忘れずに。
残された城戸は、一緒に起きた祥を抱き上げ、
「さて、夕飯だって。まだお前は食べれないけど、皆と同じ食卓に着こうな?」
預かっている粉ミルクを持って、祥にはお気に入りのおもちゃを持たせ、
「さ、行こうな」
先ほど手塚と秋山が出て行った方へと向かった。
「ところで、何故あんなことをしようとした?」
階段を下りながら。
手塚を問いただす秋山。
「決まっているじゃないか秋山」
引きずられるまま階段をがたんごとんと落ちるように降りる手塚は秋山に真顔で答える。
「?」
「城戸がかわいらしかったからだ」
「・・・・・ッ!!」
殺意めらめら。
「秋山、こうは思わないか?」
「・・・何だ・・・?」
手塚は落ちるように降りていた階段にしっかりと足をつけ、秋山を一段上から見下ろした。
「これは、城戸の夫探しのイベントだと」
「ッな!?」
「城戸は、今(預かっている子供だけど) 子持ちの状態だ。子供には母親と父親が居る。無論母親は城戸だ」
手塚はそこで間を置いて、
「ここで一つ。父親は誰になる?」
「・・・・・」
「俺はこう考えるんだが・・・・・・・ここで大きく名前を上げれば、その後城戸とのヴァージンロードが・・・・・!!!」
「!!」
話しが飛びすぎている、話しが性急すぎる、赤ん坊は明日の夜には帰ってしまう、その前に城戸は男だぞ、戸籍はどうするんだ、など等。
すっかり手塚の話に魅入られて、現実を忘れてしまった秋山。
「・・・・・・秋山、俺はここで宣言する」
「・・・・」
「俺は城戸と共にヴァージンロードを歩いてみせる!」
「!!」
「と、言うわけで、よろしく」
それだけ最後に言うと、一人で残りの階段をさっさと下りて行ってしまう手塚。
残された秋山。
呆然と、手塚の言葉が頭の中で反響していた。
「あれ蓮?どうしたんだこんなところで?」
「・・・城戸」
そこに、お気に入りのおもちゃを持ってご機嫌な祥を抱えた城戸が降りてきた。
「早く行かなきゃ夕飯冷めちまうぞ?」
「・・・・」
「蓮?」
無言で、こちらを見つめてくる秋山に首をかしげ、さらに秋山の顔を覗き込む城戸。
すると、いきなり、
「城戸ッ!!」
「えっ、はっはいィ!?」
秋山は城戸の両肩をガシィッと掴み、顔をぎりぎりまで近づけた。
「れ・蓮!?」
「城戸・・・俺は、俺は・・・・・」
「お・俺は・・・?」
「必ず・・・必ず勝ってみせる・・・お前のためにも・・・・!」
「は・はいっ!!」
すごい形相と共に告げられた言葉に、城戸は何がなんだか分からず頷いたのだった。
こうして幕を開いたこの戦い。
勝者は誰だ!?
戦わなければ生き残れない!!
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もっとほのぼのを考えていたのですが・・・・
あらぬ方向に進み始めました;
次は事務所を出したい。
っていうか、これが序章・・・ですよね?;