扉を開くと、カラン・・・と、ベルの小気味良い音が店内に響いた。
「いらっしゃい」
客がちょうど居ないのか、席はどこも空いていた。
小さめだが、いくつかのテーブルと、カウンター席がある店内。
そのカウンターの奥にはここの主人なのか一人の女性が座っていた。
「何にする?」
「あ・・・・・・」
何か懐かしさを感じさせる場所と、会話に秋山はどう返事を返したらいいのか暫しためらい、結局セイロンのオレンジペコーを頼んだ。
「あいよ。ちょっと待っててね」
そういって奥へと入っていった女性は、
「ゆいー!ちょっと手伝っておくれ!」
「あ、はーい」
聞こえてきた少女の声に、秋山は頭を大きな物で強く殴られたような衝撃を感じ、酷い立ち眩みにその場に崩れてしまった。
「ちょっ!!あんた!!大丈夫かい!!??」
秋山の様子に、慌てたように店主が出てきた。
「ユイ!!シロウを呼んできておくれ!!早く!!」
「え!?どうしたの!?」
「いいから、早く!!!」
そして、朦朧とする意識の中で見たのは、
「・・・・・ッ蓮!!」
車椅子に乗り、慌てたようにこちらへ声をかける少女と、
「どうしたんだッ!?」
奥から出てきた、一人の青年の姿だった。
ああ・・・・・
そうだ・・・・・
戦っていたんだ。
願いを・・・・
望みを叶える為に。
俺は、エリを救うために。
アイツは、戦いを止めるために・・・・。
意識を失う瞬間、視界には目にも鮮やかなスカイブルーが広がっていた。
何故、忘れていたのだろうか?
何故、思い出せなかったのだろうか?
小さなきっかけはそこ等中にあるというのに。
何故、今だったのだろう?
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