とある日の午後。
本日の天気は雨。
朝から雨がしとしとと降りそいでいる。
そのためか客の足は疎らで、殆ど暇といっていい状態。
結局、
「あ〜もう。お店開いてるほうが経費の無駄だわ!」
の、一声によって早めの店じまいとなった。
片づけを終えた店内。
なんとなく、店のフロアに残り各々が好きにすごしていた秋山と城戸。
城戸は上からノートパソコンを持ってきて仕事、秋山は店内においてあった雑誌を読んでいた。
「蓮、お茶飲む?」
「ああ」
城戸は立ち上がると奥へと入っていった。
ちょうどそんな時、
「ねー二人とも。革の靴ってどう磨けばいいの?」
この間買ったんだ、と自慢していたお気に入りの靴を持ったユイが顔をのぞかせた。
「ユイちゃん靴磨きのセットは?」
「あ、ちょっと待って」
城戸の言葉に、靴を置くと再び自室へ上がり、今度は紙袋を持って降りてきた。
「これだよね?」
「そうそう」
城戸はいったんお茶を入れる手を止め、フロアに戻ってきた。
「まずは、このブラシでこうやってごみや砂を落とす」
「うん」
しゃかしゃかしゃか・・・
しゃかしゃかしゃか・・・
「今度はこの靴磨きのクリームを使い古した歯ブラシとかで取って、靴の表面に塗りつけていく」
「ふむふむ」
しゃかしゃかしゃか・・・
しゃかしゃかしゃか・・・
「で、仕上げに今塗ったクリームをタオルとか、穴の開いた靴下とかで拭いていく」
「これって暫く置いておかなくてもいいの?」
「ん〜そうゆうことは無いみたいだよ」
「へ〜」
ふきふきふき・・・
ふきふきふき・・・
「おい、紅茶はどうした?」
「あ、ちょっと待ってて!」
拭き途中の靴を置いて、城戸は再び奥へと行き先ほど沸かしていたお湯でお茶を入れ始めた。
暫く経ってからトレーに人数分のお茶を載せた城戸が戻ってきた。
「でも、真司君。随分と手馴れてるね」
ユイは、お茶を受け取りありがとうと言いながら城戸へと聞いた。
「俺、自慢じゃないけど靴磨きなら自信あるんだよ。なんせ、3年ぐらい駅とか路上でバイトやったから」
「へー!」
「ほお?」
城戸はお茶を片手に先ほどの席に座り、残っていた作業をやり始めた。
「結構楽しかったよ。お客さんは皆親切で、同業の人たちも個性豊かだったけど優しかったし」
「どんなお客さんだった?」
素朴な質問。
「ん〜・・・・あ、俺の家の心配をしてくれた人が多かった」
「・・・・家?」
「うん」
お金が無く、一生懸命働いて実家に資金を繰り入れているようにでも勘違いされたのか?
等と、二人が考えていた時、
「『今日泊まる所あるの?なんなら俺の家に来ないか?』って」
「それって・・・・;」
二人が更なる不安と疑問にさいなまれた時、
「ああ、『なんなら今からホテルに行こうか?』って言ってくれたお客さんもいたよ。皆親切でさ〜」
「城戸・・・・;」
秋山が声をかけるが、
「そういえば、同業のおじさんたちは『寒くないか?』ってよく肩や腰に腕を回してくれたりしたっけ♪」
「皆すっごく親切だったな〜」
「蓮・・・・;」
「ああ・・・:」
雨の降る午後。
そんなアトリの一日。
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ギャグ。
靴磨きの別バージョン。
当初はこれを予定していました。
自分の靴を磨いていて思い浮かんだネタなんですよね。