――Two wishes and hope――
「佐野君に・・・嫌われてるよね」
大学の中庭。
大河と鹿島、そして東條の3人はそれぞれの飲み物を前にテーブルに座っている。
東條の呟きに2人は困った表情を取った。
確かにあの時間軸を考えて、なおかつ佐野の記憶が戻っているのであれば、佐野の中での東條のイメージは最悪な状況だろう。
利用しようとしていたとはいえ、一応、東條と佐野は協力関係にあり、なおかつ東條は佐野を自らの手で殺そうとまでしたのだ。
そんな裏切り相手に良いイメージなんかあったものではない。
そりゃーあった途端に逃げだすだろう。
「僕はどうすればいいんだろう・・・・」
ただ、前回の時間軸と違うのは東條があの頃の自分を間違っていたと分かっているという事。
「東條・・・お前、佐野に会って何を話したいんだ?」
「え・・・?」
ふと、自分の飲み物を飲みながら、鹿島が訪ねてきた。
「どうしたい?」
「鹿島?」
「お前は黙ってろ」
訝しげにこちらを見た大河に一瞥をやると再び東條を見た鹿島。
その瞳は何かを企んでいるようにも見えた。
「僕は・・・・」
「・・・・」
「僕は、もう一度・・・佐野君と話したい」
「・・・」
「多分・・・許しては、貰えない・・・と、思う。でも・・・どうしても・・・謝りたい」
過去・・・ではない、無かった時間軸での未来。
その中で過ちを起こしてしまった自分。
「前にも、話したけど・・・・佐野はお前を利用しようとしてたんだぞ??」
東條を取り入れ、自分に振りかかる火の粉を仮面ライダータイガに振り払ってもらおうと企てていた。
結局は・・・・
「でも僕は・・・優しくしてくれた佐野君を・・・・」
『大事な人を倒せば強くなれる』
そのことを信じ切っていた自分は、佐野を殺そうとしてしまった。
どうしても、謝りたい。
自分のエゴだと分かっている。
「・・・・分かった」
「え・・・・?」
「鹿島・・・・?」
ガタッと、立ち上がった鹿島はガッツポーズをつくっていた。
「俺に任せろ東條!」
「え・・・?」
「あ・・・・?」
反応が鈍い二人に、「あーっもう!!」と首をぶんぶんと振った。
「俺が東條との仲を取り持ってやるって言ってんの!!」
なんだか、見合いのような言い方である。
「え、でも・・・」
「どうやるんだ?」
ぱちくりと、しばたく東條。
すっごく訝しむ大河。
「まかせろ!何せ、あいつと契約していたのはこの俺様だ!あいつの朝起きてから夜寝るまでの行動まで、性格や好み、全部熟知してる!!」
「それって・・・」
「ストーカー・・・か?」
確かに、ミラーワールドで契約者と共に居て、鏡の中からこちらを見ていたのであれば、ストーカー・・・と、呼べるかもしれないが、
この時間軸ではモンスターでは無いので、この場合は・・・・
「エア・ストーカー・・か?」
と、大河が言いなおす。
「そこ、変な造語は作るな。んで、俺は別にストーカーじゃない!!」
響く声。
忘れていけない、大学構内。
学生と教員、用務員、関係者の人々が行き交うテラス。
『ちょっと・・・今の聞こえた・・・?』
『あれって、確か3回生の鹿島先輩じゃない・・?』
『えー・・・あたしファンだったのに、ショック〜!』
有らぬ噂が立ち上った。
慌てて逃げてきた3人は、今度はグラウンド近くのベンチへとやってきていた。
「鹿島の所為だ」
「俺かよ!!変なこと言い出したのは大河だろ!?」
「確かに言ったが、お前が大声で叫んだんだろう」
3人で息を切らし、此処まで逃げてきたのである。
だが多分、明日には噂が広がるであろう。
「ま、人のうわさは75日。大丈夫だ」
「そうだね」
あっさりな二人。
「大丈夫じゃねー!!」
叫び嘆く鹿島。
しばらくいじけていたが、本来の話しの趣旨を思い出した。
「ひ、ひとまず・・・俺に任せろ」
「・・・大丈夫なの・・・・?」
「だから、俺は佐野の事は熟知してるって!」
「そこまで言うなら一回任せてみてもいいんじゃないか・・・?」
本当は不安だが。
けれど、確かに契約していた相手のことは熟知・・・とまではいかないが理解している部分がある。
確かに、この男に一回任してみるのも道理である。
だけれども・・・・・
「作戦はあるのか?」
この男はやる気満々の時が、一番危ないのだ。
「俺を信じろって!」
この自信満々の男に、酷い不安を感じるのは・・・・自分の思い込みが過ぎるのだろうか・・・・?
「いいの・・・・?」
「ん?」
「僕の・・・ことなのに、鹿島・・・・」
東條の酷く不安そうな顔に鹿島は大きく頷いた。
「大丈夫、任せろって東條。俺が佐野とお前を仲良くさせてやるって!」
男の声が三度、口内に響いたのだった。
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