「何故好きになったか、か?」
カードゲーム。
アトリのテーブル席で二人。
納戸から見つけてきた懐かしいカードゲームに興じていた。
ウノである。
店主に言われ、納戸の整理をしていたのだが、その時ころっと出てきたのだ。
片づけをすべて終えて、手塚と城戸は二人で行うことにした。
因みに今は夜の8時。
遅いと言うほど遅くもなく、逆に早くもないこの時間。
アトリはすでに閉店している。
片付けも終わっており、二人が座っている椅子以外はすべてテーブルに上げられている状態である。
「久々だな〜」
「そうだな」
カードの束を器用に切っていく手塚。
やはり商売柄なのだろうか。
手塚の手元を見ながらそう思った城戸。
と、手塚の手が止まる。
「手塚君?」
「ただゲームをやるだけじゃつまらないな」
「へ?」
いきなり言いだした手塚。
しばらく天井をじっと見つめたまま微動だにしない。
どうやら何か考えているらしい。
「城戸」
「何?」
城戸へと戻された視線。
「会話しながらやるか」
最初は「へ?」と思ったのだが、どうってことはなかった。
「最近何かいいことはあったか?」
そういった手塚は、黄色で6を出す。
因みに、今までの色は赤色であり数字が6だった。
城戸は唸りながら、黄色を出すか同じ6を出すか悩む。
「いいこと・・・?」
「そうだ」
「いいことねぇ・・・」
先程手塚が出した案は、こうやってカードを出す際に何か質問なり話し出すこと、だそうだ。
最初は四苦八苦しながらカードと会話をしていたが、ゲーム中盤。
お互いのカードが半分程になってようやく城戸も慣れてきた。
因みに、持ち手のカードの量は二人しかいないので、一山を二人で消費する形となる。
つまり結構な量であるわけで・・・
「ああ、自給が10円上がった!!」
言葉とともに出された、黄色いカード。
手塚は少し悩みながら、黄色を出した。
「それはすごいじゃないか。正社員も夢じゃないな」
城戸は再び黄色を出す。
「だろだろ!」
会話を成立させるためにはリズミカルに持ち手カードを出さなければならない。
実は意外に難しいのである。
「俺も応援してるぞ」
「ありがとな」
会話をしながらカードを出す。
「あ、そうだ」
「どうした?」
因みに、疑問を返すにもカードはいる。
「ちょっと紅茶飲まね?」
「ああ、いい考えだ」
暫しの間。
「ふ〜生き返る〜」
「・・・・美味しいな」
一時休戦。
お互い紅茶を飲みながらほっと一息。
「さて」
「うっし」
「「勝負」」
再スタート。
城戸からのターン。
「そうだな・・・・」
考える。
何か聞きたいこと・・・・・
そして思いついた。
「その・・・・さ・・・・えっと・・・」
カードを出すが、質問を切り出せない。
すると、
「何故好きになったか、か?」
続けるつもりだったカードに、重ねられた手塚のカード。
しかも、頭の中がモロばれである。
「な、なんで!?」
驚いて思わず聞き返したが、手塚に手持ちのカードを指刺された。
質問内容がモロばれであることに恥ずかしいやら、理由を知りたいやら、逸る気持を抑え、
しぶしぶと手持ちのカードを出した。
「占いで」
すぐ返されるカード。
「・・・なんか卑怯だ」
「商売特許だ」
すぐに返されるカードと共に少しだけ得意気な手塚の表情。
少々むくれながら、カードを出す。
「で、お答えは?」
少しの間。
「そうだな・・・強いて言うなら・・・城戸だから、かな?」
「俺、だから?」
出したカードに城戸は色を変更と、相手に4枚取らすWild Draw Fourを出した。
「むぅ・・・・」
しぶしぶと4枚カードをとる手塚。
すると、その目が少しだけ笑った。
「俺は別に男だから、女性だからとかは考えてはない」
出されたカードはSKIP。
再び手塚。
「俺は同姓愛者ではないからな」
再びSkip。
「だから、理由は城戸、お前だからだ」
質問を挟む間もなく、全回答を返された。
何処か面白くない。
少し、むすっとしながら城戸はカードを出した。
「なんか、今日の手塚君は意地悪だ」
「そうか?」
何を返せばいいか分からなくなる。
「パス」
出すことができなくなった手持ちのカードと共に、告げられる城戸のパス宣言。
「・・・・そうだな、じゃぁ俺からも聞きたい」
手塚の出したカードに「何を?」と城戸はカードを返す。
「城戸は、俺のどこに惚れてくれたんだ?」
顔面噴火するんじゃないかと思った。
城戸は予想外の質問に口を魚のようにパクパクとさせる。
無言で差し出された紅茶のカップを城戸は慌てて飲み干し、息荒く呼吸をする。
暫しの間。
要約落ち着いた城戸。
「答えなきゃ・・・だめ?」
城戸の出したカード、Draw Two。
先程から城戸の持ち手はカードを取らせる物が多い気がするが・・・
「強制はしないが、答えてくれたら嬉しいな」
そう言われ、答えられないわけがない。
半強制的な返しをくらい、城戸は再びWild Draw Fourを出す。
「手塚君だから」
四枚とる手塚。
そして、一枚カードを出した。
「俺だからか?」
「手塚君と一緒なんだよ・・・それ以外の答えは考えられない」
顔を真っ赤にしながら言う城戸。
「ありがとう」
「ふへ?」
まさか御礼を言われるとは思わなかったため、驚き手塚を見やる。
再びカードを出せと指さされた城戸。
「むぅ・・・」
カードを出す。
手持ちのカードは残り3枚となり、少しずつ王手が見えてきた。
そんな時。
「城戸」
名前を呼ばれ咄嗟に顔を向けると、
「ウノ」
「え!?」
よくよく見れば、手塚の持っていたカードは残り一枚。
そして、捨て場所をみると、ごっそりと置かれた同じ数字たち。
「ちょ・・待った!」
再び指さされたカード。
ここで迂闊にカードを出してしまったら手塚は上がる可能性がある。
しかし、城戸が出すカードに続けられるようなカードでなければ上がれないわけで。
そうなると、確率的には手塚が出せるカードを持っている可能性はやはり低いのではないだろうか?
しかし、ここで無暗にパスなどしてみても、なんだか怖い。
というか、手塚相手にカードゲームはやはり無謀だったか?
今更なことまで考え始める城戸。
――― コンコン。
机を爪で叩く音。
手塚に無声で早く出せと催促されてる。
「・・・・儘よ!!」
出したカードに・・・・
「城戸・・・」
「・・・・?」
ひらりと乗せられた手塚の最後のカード。
「愛してる」
言葉と共にテーブル越しに顔を寄せた手塚は、城戸の頬へ唇を寄せ、小さく音をたてた。
と、同時に城戸の頭の中で爆発音が響き渡ったのだった。
書き物部屋
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手塚祭第5弾。
フィナーレでございます。
最後は絶対に甘いものを!!
と、頑張ったのですが・・・いかがでしたでしょうか・・・・?
正直、もっともっと甘くしたかったのに・・・・少し、首をひねりたい狼です。
因みに、このゲームルール。
実際にやりました。
結構難しかったです。
因みに、負けたらジュースを奢る予定になっていたのですが・・・
途中でゲームが時間がきて、続きはまた・・・また・・・また・・・
いまだ続きをやっていません。
これからどんどんと寒くなります。
どうか皆様、温かい格好で、風邪などひかないようお気をつけてください。