蜂蜜。











カウンター









蜂蜜100%のアメを買ってみた。

理由はただ単に、ものめずらしかったからだ。

砂糖等といった他の糖類を使わずに、ハチミツ100%で固められたアメ。

しかも、特許製法とまで書かれている。

こう書かれてはジャーナリストとして興味を持たないほうがおかしかろう。

というわけで(この間、お給料日であったこともあり)、

城戸は会社帰りにコンビニでそのアメを買ってきたのである。





その数日後。

このところ気温が安定せず、寒かったり暑かったりを、繰り返し、体調不良になる人たちが多くなった。

親から授かったものなのか、健康が取り柄の城戸真司(23歳)。

その日も元気に出勤し、帰ってきた。

1Fから室内へ。


「あれ?」


もう閉まったはずの店舗部分の奥、キッチンフロアから明かりが漏れている。

遅い時間のため、夕飯、とは考えられない。

誰がいるのだろう?


「ただいまー」


ひとまず一声かけて、中をのぞいてみた。

すると、


「ああ、お帰り・・・」


掠れた声の手塚が出迎えてくれた。

その手元には、ポット、カウンターには手塚のマグカップ。

どうやら、これからお茶を飲もうとしていたようだ。

それよりも・・・・


「手塚君、どうしたのさその声」

「どうやらカゼを引いたらしくてな」


掠れ声の手塚。


「風邪!?熱は!?」

「いや、さっきユイちゃんにも言われて測ったが平熱だった。喉だけみたいだ」


どうやら鼻も出てないらしい。

あまり重症ではないことにひとまず安堵のため息をついた。


「あ、そだ」


ふと思い出す。


「これ買ったんだけど、喉が痛いならちょうどよかった」

「?」


数日前に買って、鞄に入れっ放しだったアメを一つ取り出す。

それを手塚の手のひらに乗せた。


「蜂蜜100%・・・」

「だから喉にいいかなって」

「変わってる飴だな」

「だろ?だから思わず買ったんだ」


そう話す城戸は新しい玩具を見かけた時のように、楽しそうに話す。





       ふと、手塚の中で芽吹いた好奇心。





「城戸は食べたのか?」

「実は、まだ」


そう笑った城戸。





そして、好奇心は咲き開いた。





試しに一つ食べて、


「城戸」

「へ?」


どうせなら・・・

一緒に味わうのも、たまにはいいじゃないか。





         「ッ!?」





城戸の口の中に温かな何かが入り込み、それと一緒に硬い物も入ってきた。

歯に硬く角のない感触が当たる。

その次に、なんだか自分の舌が何かに吸われてるかのように引っ張られる。

ついでに、口内に入ってきた硬い物が出てく。

しかし、外気に当たる感覚はせず、自分よりも少し熱い、何かの中に引きずり込まれた。

後は、もうその繰り返し。





城戸は、無意識のうちに自分を背中を強く抱いていた手塚の二の腕に爪を立てていた。











手塚の顔が離れる。

口の中には甘い味だけが残った。


「・・・て、てづ・・・・」

「何だ?」


 ――― カロ・・・


手塚がしゃべると、歯に飴が当たった音がした。


「な・な、何して・・・・・」

「何って・・・キ――――」

「言うなッ!!!!」


手塚の口を思わず手で塞ぐ。

城戸、頬に爪が食い込んで少し痛いんだが・・・

最近爪切りサボってないか?

今なお茹蛸状態である城戸の手を優しく掴み、離してくれと、促す。

離された腕と、


「ッ〜〜〜///」


赤に紅を足して朱で割った城戸。

そのまま床にしゃがみ込み頭を抱えた。

そんな城戸を見遣って、


「城戸」


名前を呼ぶと、びくっと身体を震わせ、身体を固くした。

手塚は城戸の様子に苦笑し、同じようにしゃがみ込む。

すると、赤い顔を俯き頭を抱えていた腕で顔を隠してしまった。



 ――――おやおや。



どうやら余程の重症らしい。



一先ず。



「ご馳走様」


「ッ―――///!!!!


悲鳴にならない悲鳴が上がった。















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R様へ。
心をこめて、海真を・・・。






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