花を育てよう。




ある晴れた日のこと。
その日、城戸と秋山はアトリの店主から買出しを仰せつかり、駅近くの大型スーパーへと繰り出していた。

「えーっと・・・あ、あった」
「城戸、これもだ」

こんな感じで、先ほどから二人で買出しメモを覗き込みつつカートを押していく。
気がつけば、カートに乗り切らない程の量の買い物になっていた。

「2人で運べって、無理あるよこれ・・・」
「ったく・・・あの人は何時もそうだ」

あまりの荷物の量に、二人してげんなりとしながら会計を済ませ、何とか袋詰めし、それぞれが袋を携えた。
そして、スーパーを出て暫く歩き、秋山は横にいるはずの城戸がいないことに気がついた。

「城戸?」

後ろを振り返ると、先ほど通過した花屋の前に城戸は立ち止まっており、何かを真剣に見ていた。
不思議に思いながら、城戸の元へと歩み寄る。

「どうしたんだ?」
「あ、蓮」

秋山が近づき、声をかけると、城戸は今気がついたように顔を向けた。
そして、重たい荷物で腕が動かせないため、指だけであるものを指した。

「あれ、アトリの庭にどうかな・・・って」
「どれだ?」

城戸が指差したほうには、小さいながら沢山の花の蕾をつけた小さな鉢があった。
周りの同じ種類を同時に見やると、薄い蒼をした花なのだとわかる。

「前に俺が、なんか植物育てたいな〜って言ったら、おばさんがいつでも買ってきていいって言ってくれてさ」

今、花屋の前で唐突に思い出したんだと、言う城戸。

「いいんじゃないか?」
「やっぱり?」
「しかし、この荷物じゃ持って帰れないぞ」
「・・・やっぱ?」

秋山が頷くと喜ぶ顔を浮かべるが、その次に、秋山が言った言葉に少しがっかりした顔を浮かべた。
そんな城戸に小さく笑いながら、城戸の横にある棚から掌サイズの袋をとった。

「蓮?」
「鉢は無理だが・・・」
「え?」
「これなら、持って帰れるだろう」

そういって、城戸の前に差し出されたのは鉢と同じ種類の花の種。


花を咲かせましょう。
土を作って、種を撒いて。
毎日水をやって、世話をして。

二人で一緒に。




書き物部屋




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えー、カウンター500を超えた記念に書きました。
表に置いておいた時はフリーでしたが、今は違うのであしからず。