本質。



カウンター





午後から店主であるサナコが何か用事があるとのことで、急遽アトリは休みとなった。
今の外は雨がしとしとと降っていた。
そして、城戸、手塚、秋山の三人は紅茶片手に何をするでもなくそれぞれが店のフロアで自由に過ごしていた。

「秋山、城戸。お前達はライダーの戦いは何なのだと思う?」
「え?」
「・・・・」

いきなりの手塚の質問。
いや、質問というほどでもないのかもしれない。それは素朴な疑問だった。
ライダーとは一体何なのだろうか。

「そんなことを聞いてどうする?」

読んでいた新聞をめくりながら問う秋山に手塚は微笑し、懐からタロットカードを取り出すと、座っていた椅子のテーブルにそれを並べ始めた。
手塚の前に座っていた城戸は、それを不思議そうに眺めているだけ。

「いや、ただ思っていたんだ。ライダーとは一体何なんだろうなと」

そう言いながら並べられたカードを再び束にして、切り始める。

「つまりはライダーの本質・・・ってこと?」
「上手いな城戸」
「・・・」

トントン・・・・

十分に切ったカードを机でそろえる。切り終えたカードはテーブルに並べられていく。

ライダーは戦う為にライダーであることを選んだ。

「だったら、やっぱり戦うことが本質じゃない?」
「The emperor」

城戸の言葉に、手塚は一枚のカードをめくる。
4番目のカード『皇帝』。
戦い、勝利、支配、目的達成、短期決戦、ワンマン、独裁者。

「城戸にしてはよく考えるじゃないか」
「なにおぅ!?」

新聞を読んでいる秋山の茶々に毛を逆立てた猫のように噛み付く城戸。
二人の軽い喧嘩に苦笑しつつ手塚は秋山に問いかけた。

「だったら、秋山は何だ?」


「・・・・願いじゃないか?」

ぱらり・・・・

新聞のめくれる音とともに告げられた言葉に、城戸は小さく「あぁ・・・」と納得したような声を出した。

「The Star」

再び手塚は一枚のカードをめくった。
17番目のカード『星』。
希望、ひらめき、願いが叶う、失望、無気力、高望み。

「手塚君は?」
「俺か?」

城戸の問いかけに手塚は少しだけ考えるように視線を動かすと、そのままカードを一枚めくった。

「Death」
「え?」

13番目のカード『死神』
終末、破滅、離散、死の予兆、再スタート、挫折から立ち直る。

「それから」

その横にあったカードをめくる。

「The Hanged Man」

12番目のカード『吊された男』
修行、忍耐、奉仕、妥協、犠牲、生贄、徒労、痩せ我慢、欲望に負ける。

「死神に吊るされた男・・・・?」

ぱさり。

「理由は何だ?」

城戸の言葉に、秋山は読んでいた新聞を畳み、城戸と手塚の方に視線を向けると、手塚に訪ねた。
秋山の方に視線を一度向けた手塚は小さく笑いながら、死神のカードを手に取った。

「城戸、ライダーの数は総勢で何人だ?」
「え?13だろ?香川さんのはライダーじゃないし」
「そうだ。じゃぁ13の数字は何だと思う?」
「13?」
「ああ」

城戸は暫し悩むと手塚の持っていたカードを見て、少し目を見張った。

「死神・・・?」

13。
それは西洋では死や不幸、悪魔等を意味する不吉な数とされている。

「ああ。ライダーの数は死神の数字と同じだ」
「それが本質?」
「あたっているが、はずれでもある。これは土台だ」
「土台?」

手塚は持っていた死神のカードを置くと、その横にあった吊るされた男のカードを手に取った。

「本当の本質は、“犠牲”若しくは“生贄”だ」
「・・・・犠牲、生贄・・・?」
「・・・・」

持っていたカードを城戸の方に置き、手塚は紅茶を一口飲んだ。

「ライダーの戦いは最後の一人になることが条件だ」
「それがどうした?」
「秋山、お前は普段物を買う時変わりに何を差し出す?」
「・・・金だろう」

眉間に皺を寄せ、いぶかしみ答える秋山に頷く手塚。

「そうだ。俺達は常日頃対価を出して何かを成している」

そう言うと、今度は城戸を見た。

「城戸」
「えっは、はい!?」
「ライダーの戦いで得られる願いに対する対価とは何だ?」
「え・・・えぇーっと・・・ちょ、ちょっと待って・・・」

手塚の質問に頭を抱え悩みだす。

「対価・・・だろ?対等な価値になるもの・・・モンスターとの契約?んなわけないか・・・英雄・・・は違うし、戦い自体か?」
「どうだ、答えは出たか?」

悩んでいる城戸の様子に小さく笑いながら問いかける手塚だが、城戸はもうちょっと待って、と手で制した。

「願いに対する対価・・・叶えてもらうんじゃなくて、こっちが差し出すもんだろ?何だ・・・?」

時間、一生、自分の欲。金は支払わない。
月々金を支払ってライダーになるんだったらヤクザ業もいいところだ。
第一、そうなったら保険でもつけて欲しくなる。
ライダーとしての願い。それは各個人による。自分や手塚は戦いを止めるため、秋山は意識不明の彼女を助けるため。
自分や手塚は違うが、他は願いを叶えるために戦って最後の一人を目指している。
詰まりは相手を蹴落としているのだ。
その蹴落とした死体で作った山の上にある願い。
それを手にするために死体を踏んで進んでいく。

「・・・・もしかして」

ふと、嫌な考えが浮かんだ。
しかし、この考えが今一番にぴんと来るものだ。

「どうだ?」

手塚はそんな様子の城戸に小さく笑いながら促す。

「他のライダー・・・とか?」
「・・・どういうことだ城戸?」

手塚を伺うように答える城戸。しかし、秋山は城戸の答えが以外だったらしく、不審そうに城戸へと問いかける。
城戸も秋山を振り返って説明しようとするが、考えていたことがまとまっていなかったのか上手い説明文が思い浮かばない。
「あーうー」と意味不明な言葉しか出せなかった。
その城戸に焦れた秋山はこちらの様子を伺っている手塚を睨み、視線で先を促した。
その視線を受け止め一つ頷くと、手塚は「城戸」と呼んだ。

「その答えは当たっている」
「やっぱし・・・?」

不安そうな表情の城戸。

「先ずは俺達がライダーになった対価。それは俺達自身の時間であり、一生。若しくは命だ」
「・・・・」
「そう・・・だね」
「そして、最後の一人の願い。この願いに対する対価は・・・他のライダーだ」
「・・・だから、どういうことだ?」
「ライダーは最後の一人になるため、他のライダーを倒す。詰まるところ生贄だ」
「っ!?」

城戸と秋山の目が見開かれる。



「自分を除いた12人の生贄と交換に、対価として己の願いを叶える。これがライダーの戦いの本質だ」




そう言うと手塚は持っていた12番目のカードを元の位置に戻した。











書き物部屋





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すみません;オチはありません。
無駄に意味が分からない文章になってしまいましたが、
お許し下さい;

13はライダーの総数でも有り、死神。
12は最後のライダーを除いた数であり、生贄、犠牲。
狼が考えるライダーバトルの本質はこれなんです。


でも、文中で出てきた保険。
ライダー保険。もしあったら面白いかも(笑)