Cat.



カウンター






「おい蓮!!」
「・・・・」

とある晴れた日曜日。
暖かい日差しに暖かな気温。
昼寝をするにはもってこい。

「蓮!!返事しろってば!!」
「・・・・」
「真司君どうしたの?」

アトリの店先。
城戸はアトリの屋根の下から空を見上げる形で一人、叫んでいた。
その様子を店内から見ていた少女が不思議な顔をして出てきた。

「ユイちゃん。蓮の奴が屋根の上から降りてこないんだよ」
「ああ、なるほどね」

ある日突然秋山が猫になってから一週間。
何事にも慣れやすい人たちは普通の生活を送っている。

「蓮!!蓮!!!」
「・・・煩い」

蓮!と、呼んだ後でぼそりと呟かれた声。
もちろん、秋山の声だ。
屋根の上から顔を出したのは、一匹の綺麗な黒猫。
その顔は「いったい何の用だ?」と、物凄く迷惑な表情をしている。

「煩いじゃねーよ!!声掛けてんだから返事ぐらいしろって!!」
「はぁ・・・」

見せ付けるように、ため息をつく黒猫。
その瞬間、

「アダッ!?」

城戸の首がグキリと嫌な音がした。
黒猫こと秋山が城戸の頭に屋根から飛び降りたのだ。

「ちょ、連!?」

痛がる城戸を尻目に、黒猫はそのまま少女へと飛び付き、少女は黒猫を抱き止める形となる。
首に多大な被害を受けた城戸は、両手で首を抑えるとそのまま動かなくなった。

「し、真司君?」
「ふわぁ〜・・・」

少女に抱かれる黒猫は、痛がる城戸には目もくれず、暇そうにあくびをした。
心配そうにうつむいている城戸を覗き込んだ少女。

「・・・だ、大丈夫・・・?」
「な・・・何とか・・・」

首を押えながらも、少女の問いかけにい律儀に答える城戸は、目に大粒の涙をためていた。
流してはいない。溜めているだけ。
しかし、其れほどまでに痛みを堪える青年の姿に、少女は一層可哀そうな気持ちに駆られたのだった。










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