朝。リビング兼ダイニングには朝食の香りが漂い始める。
「おはよー」
「あ、真司君おはよう」
「ユイちゃんおはよう。・・・あれ、蓮は?」
「え?まだ?」
「珍しいな秋山が寝坊とは」
「あ、手塚君おはよう」
「おはよう、城戸」
「俺、ちょっと云ってくるね」
「お願いねー」
アトリ、居候部屋。
「蓮?」
そっとドアを開きながら、部屋の中をうかがってみる。
「蓮?」
もう一度、呼ばわってみるが、きっちりと閉じられたカーテンの中からは返事がない。
カーテンを静かに開くと、そこには布団のなかで未だ眠り続ける秋山が見て取れる。
「幸せそうな顔、しやがって・・・」
眠っている秋山の顔は、何か良い夢でも見ているのか、いつもの剣呑な表情は息を潜め、柔らかな顔をしていた。
「いつもこうだったら、いいのに・・・」
暫く、その顔を見ていたが、自分の腹の虫が小さく鳴いた。
「蓮、朝だぞ。起きろよ」
「ん・・・」
声をかけるが少し動いただけで、再び寝息を立て始める秋山。
「起きないと、ちゅぅ、しちゃうぞ」
と、脅しじゃない脅し文句を述べても起きる気配が一向にない。
「・・・・うりゃ」
ちゅっと小さな音を立てて、寝息を立てている唇へと自分の唇を重ね合わせた。
「・・・んっ!?」
その瞬間、いきなり後頭部をがっしりと押さえつけられ、尚且つ右腕さえも秋山の手に握られ、自由を奪われた。
その上、
「ん・・・はッん!!」
「・・・随分とかわいらしい起こし方だな」
最後に、離した唇をぺろりとなめられ、城戸は小さく身震いした。
「ば・・・か・・・」
「これだけで、腰が抜けたか?」
力が抜けた体を秋山にもたれさせ、動悸が激しい心臓を落ち着かせるよう深呼吸をするが、未だ落ち着かない。
「朝・・・飯」
「・・・もう、そんな時間か」
城戸を支えながら、壁に立てかけてある時計に視線を投げ、聞こえるか否かの小さな舌打ちをした。
その舌打ちの真意は問い質さないことにしよう。
城戸は心に決めた。
「城戸、起きろ」
「無理云うな・・・腰が抜けたんだから」
誰の所為だ、と秋山の耳を少し痛い程度にかじる城戸。
「ッ・・・・・いい度胸だ・・・・・城戸、朝飯は抜きだ」
「え・・?」
「出かけるぞ」
「えッちょッ!?蓮!?」
いきなり担ぎ上げられた城戸は、視線がいきなりあがったことに、軽いパニックを起こした。
「大人しくしていろ、落とされたいか?」」
大人しくなった城戸をそのままに、秋山は朝食の準備が整っているリビング兼ダイニングへと降りていく。
「あ、おはよう蓮」
「おはよう秋山」
「出かけてくる」
「ええ?」
「おろせ!!下ろしやがれ!!!」
「城戸・・・」
「あーあ・・・どうすんのよ・・・人数分の朝食」
2人が帰ってきたのは、店も閉まる夜だった。
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先に出した海真の、蓮真バージョンです。
はい。誰が何と言おうとも、蓮真バージョンです。
絶対に蓮真バージョンです。
やっぱり、“甘い”は、無理でした・・・・。