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死ぬとは何だろう?
あたりまえだけど改めて考えるとややこしい問題である。
始まりがあれば終わりがある。
多分産まれることを始まりと言うと死ぬという事が終わりだろう。
さて、死ぬこと。
全ての感覚が消え失せ、意識が亡くなることだろうか。
多分眠るとはまた違うのだろう。
気を失うという言葉があるが、正直経験したことが無い者から言わせてもらえば、睡眠と気を失うの差があまり分からない。
第一、眠ると夢を見る。
これは心臓と脳が生きてるからこそ・・・いや、脳だけでも生きて・・・植物人間の条件は心臓だけが生きてることだ。
つまりは脳だけが生きることはない。
死んでしまったら多分夢自体見ることもないのだろう。
やはり回答不可能。
だとしたら、産まれるの意味もよくわからない。
母親の体内に命として宿り、十月十日栄養と暖かい羊水の中で細胞分裂を繰り返しながら体をつくっていく。
その過程の中で、意識は何時に作られるのだろうか?
『脳』が作られてからだろうか?
それとも『心臓』が作られてから?
2,3歳の子供に聞くと母親のお腹にいた頃のことを記憶として留めている子もいるらしい。
そんな取り止めの無いことを時折考える。
だが、結局今までに解を得られたことは一度としてなかった。







  ―― Two wishes and hope 〜生きる〜 ――










――――― Rrrr...Rrrr...

家の固定電話が鳴り響く。
自分以外の家人はちょうど出払っているらしく、面倒だが仕方ない、と床に寝転がった体を起こし、1階の電話口にまで階段を下りて行った。
未だ鳴り響く電話に、休みの日ぐらいのんびりさせてくれと、疲れた溜息を吐いて煩く喚いている受話器を取った。

「はい、もしもし?」
『XX区警察署ですが・・・』
「・・・・はい?」

今、なんと仰った?
暫し空いた間に相手は無反応で続きを話しだした。

『そちらは、時田XXさんのお宅で間違いないでしょうか?』

出された名前は、この家の大黒柱である父の名前。

「え、ええ・・・そうです、俺の父です・・・」

一体、警察からなんて何があった?というか、何をした父よ。
と、変に冷静なツッコミなんぞを入れてしまった。

『お父さんは、今御在宅ですか?』
「え、あ、いや、今仕事に出てますが」

朝方、急な仕事が入ってしまったと忙しなく家を出て行った。

「あの、父がなにか・・・・?」

馬鹿に煩い心臓を抑え、恐る恐る聞いてみる。

『実は・・・先程、城戸龍牙君を補導しました』

・・・・・・・・・・は?

「え、あ・・・・・・・りゅー・・・・が?」
『はい、親御さんは海外に出張で、保護者は時田さんだとお聞きしたのですが?』

違いますか?と、聞かれ慌てて首を横に振った。

「い、いえそうです!うちの父が保護者です!!!!」
『すみませんが、今すぐこちらに保護者の方に来てほしいのですが』

細かな住所、電話番号と電話口の相手の名前をメモし、一先ず電話を切る。
受話器を置いて、しばらく固まっていた。

  リュウガが補導?
 
―――― あの、リュウガが・・・・・?


ドラグブラッカーであった、時田竜馬はそのまま動けなかった。









「こちらです」

慌てて連絡した両親と共に警察署までついてくと、担当の警官の人が道案内をしてくれた。
そして、一つの扉の前に付くと、扉を開く。
其処は酷く殺風景なこじんまりとした部屋。
そして、簡素なパイプ椅子に座っている制服の男性警官と向かいに座っていた・・・

「リュウガ!!」

その姿を見た途端、両親を押し退け慌てて近寄った。

「・・・竜馬」
「リュウガ・・怪我だらけじゃないか・・・一体何があったんだ!?」

擦り傷に切り傷。
額にも怪我を負ったのか白い包帯が巻かれている。
頬にはガーゼ、右まぶたも青紫に腫れ上がっている。
唇を切ったのか、口の端にも傷バンが貼ってある。
どう見ても、喧嘩をしたと言わんばかりだ。
学校に行く途中だったのだろう。黒の詰め襟は砂にまみれ、所々に綻びが出来ていた。

「・・・リュウガ」
「伯父さん、伯母さん・・・・竜馬・・・ごめん・・・」

両親の姿を見て、竜馬を見て、リュウガは小さく謝った。







これは、まだ真司とリュウガの両親が海外に出稼ぎに出たばかりの頃のこと。
城戸兄弟が中学2年生、14歳を迎える年の春先。
海外から城戸夫婦に仕事のオファーが来たのだ。
その仕事は今より待遇が良く、直ぐに受けたのだが・・・・流石に中学2年生の息子を一人家に、一人病院に残していくのは不安だった。
そのため、リュウガはリュウガ達の母親の親戚、時田家に預けられることになった。
リュウガは少々短気な気質はあるが、現状を見る目はあった。何の抵抗も見せず、すんなりと同居に頷いたのだった。
リュウガに宛がわれた部屋は、時田兄弟が勉強部屋として使っていた部屋。
その日からリュウガは時田家で一緒に暮らし始めた。







「朝方、龍牙君は数人の高校生と喧嘩をし、他の人が呼んだ巡回中の警官に補導されました」

説明を受ける両親、それが終わるまで廊下で待つようにとリュウガと共に廊下にしつらえてあるベンチへと腰をかけた。

「・・・・・」
「いったい、何があったんだ?」

竜馬が聞いても、押し黙るだけ。
仕方なく、近くの自販機で買っておいたジュースをリュウガに押し付け、自分も隣に座る。

「・・・・あまり、怪我はするなよ?」

痛々しい怪我に触れないように、そっと頭を撫でる。
常であれば、子供扱いするなと邪険に払いのけるのだが、今回は大人しくされるがままだ。
珍しいとは思いながらも、この元マスターだった少年が心配だった。
蛍光灯が付いている廊下には、窓は無く、春先だというのに、ひんやりとした冷たい空気に満ちていた。

「・・・・・・・竜馬」
「・・・ん?」

どれぐらいそうやって座ってただろう。一分かもしれない。いや、実はその30分もいったかと思ったりもした。
そんな中、リュウガは徐に口を開いた。

「俺・・・真司の部屋に帰る」
「え・・あッ・・・・オイッ!!」

ベンチからふらりと立ち上がりそのまま歩き始めるリュウガ。
慌てて竜馬がその腕を掴むが・・・・掴んだ途端、まるで今までの我慢が崩れたかの如く、リュウガは冷たい廊下で咆哮を上げた。

「うわぁああああああああああッ!!!」
「ッ!?」

喚き、叫び、リュウガは竜馬が掴んだ腕を振り払おうと我武者羅に暴れた。

「離せ・・・離せってば!!!!」
「ちょッ・・・リュウガ、落ち着けッ!」
「どうしたんだ!?」

部屋の中で事情説明を受けていた両親と警官も慌てて廊下まで出てきた。

「と、父さん!リュウガがッ!!」
「離せッ!!真司んとこ帰るんだよッ!!!」
「落ち着けリュウガ!!」

竜馬と、父親の2人がかりで抑え込まれたリュウガはその場で泣き崩れ、今度こそ何を問うても答えてくれることはなかった。




その後は、一先ず警察からの厳重注意を受け、
連絡を受けた学校としても、何も言わずだんまりな生徒にどう対処しようかとだいぶ迷い、3日間の謹慎処分とした。
後から捕まった相手は、近くの高校の不良グループであり、どちらに非があるのかが分からないようだ。


一先ず、少なからず騒ぎとなった学校が落ち着くまでと言う三日間。






そして、リュウガ自身は・・・・・








白い部屋。

「ん・・・・あ、もう朝・・・・?」

窓ガラスから光が煌々と差し込み、部屋を明るく照らし始めた。
また、今日から1日が始まるのだ。

「ふ・・・わぁあ〜〜〜〜・・・・ネム・・・」

まだ、少し重い瞼を擦り、覚醒を促す。
ついでに伸びも一つ。

「んっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

漸く、頭が動き始めた。
と、腰辺りで何かがもぞりと動く。

「ほら、もう朝だぞ?」

声をかけるが返答は無い。
どうやら、まだ惰眠を貪りたいようだ。

「ほら、リュウガ」

と、城戸の言葉に「んー・・・」と、寝ぼけた声が聞こえてきた。

「もう、朝だって」
「やだ・・・・まだ寝る」
「やだじゃないだろうが」

ぽかり。
蒲団の上から頭と思われる個所を叩く。

「・・・・」

しばらくして、もぞりもぞりと布団が動き自分とよく似た髪が見えた。
布団から目の位置を覗きだし、こちらを少しだけ恨みがましく見てくるリュウガ。

「ほら、早く起きないと朝飯ないぞ?」

腹は減ってないか?と問えば、小さな声で、

「空いた」

と返ってくる。
その顔はまだ痛々しく、包帯も絆創膏も昨日病室に来た時のままだ。
城戸は一人ベッドから起きると、簡易な小さな冷凍庫からホットケーキを二食分取り出し、レンジへとかけた。
ついでに簡易電気コンロにてお湯を沸かす。
本当に至れり着くせりな部屋である。
部屋と言うか一応病院の中の施設であるため、ここは病室という括りとされているはずだ。
それなのにこの生活水準。
どれぐらいの金額を支払っているのか・・・・
それを考える度に胸の奥が重くなってくる。

「どうした、真司?」

後ろから枝垂れかかるようの抱きつかれ、城戸はなんでもないとゆるく首を振った。
手元に置いていたラジオを着ければ、スピーカーからはパーソナリティの軽快な声が曲と共に流れてくる。

「ホットケーキはバターでいい?」
「後ジャム」
「了解」

すんなりと離れたリュウガは先に席に着き、ぼんやりとはめ込み式の窓から外を見た。
お湯も沸いて紅茶の準備を整える。
チンッと鳴いたレンジからホットケーキを取り出せば、リュウガのいるテーブルに取り皿とともに置いた。
バターとジャムを用意し、紅茶を淹れて、おしゃれなモーニングの出来上がりである。

「ほら」
「あんがと」

紅茶のカップを受け取り2人で手を合わせ、

「「いただきます」」

と声をハモらせた。






ラジオが流れる室内。
二人で取り止めのない会話をする。
学校はどうだ、お前は父ちゃんか、誰か好きな娘は、いるかボケ俺はお前が好きなんだから。

「・・・・恥ずかしいし奴」
「正直に言って何が悪い?」
「そーゆーの、傲慢って言うんだぞ?」
「言わせたい奴は言えば良いんだよ」

おかわり。
空になった皿が突き出されて、はいはいと受け取り、余分に温めておいたホットケーキを乗せてやる。

「ほい」
「ん」

ほふほふとホットケーキを頬張るリュウガ。

「それ食い終わったら、先生に頼んでガーゼ取り替えてもらうからな」
「あだ(やだ)」
「やだじゃ無い。ここ(病院)にいる限り、変えさせてもらう」

それとも竜也んとこ帰るか?
そう脅せば、リュウガは子供のように、小さく首を振った。

「じゃ、いいな?」
「・・・・・・」

こくりと頷いたリュウガの頭を撫でる。
あの戦いの中で現れたもう一人の自分。
死んだ後の何もない道で、願った思い。
重い金属の扉を押し開いて、生まれた双子。
城戸は自分で言うのもなんだが、かなりのリュウガ贔屓だと思っている。
昨日、竜馬に付き添われ怪我だらけのリュウガが突然やってきたのだが、城戸は詳しいことは聞かず、三日程停めて欲しいと願った弟に頷いた。
城戸が今いる部屋は無菌で、24時間薬品が散布されている。
だから、健康な人間が長々いては、逆に病気になる可能性があり、長居をすることは出来ない。
本来はあまり良い顔をしないのだが、リュウガだけは特別だった。
熾烈な争いで、現実世界での存在を強く願った弟。
ならば、今のこの世界を心ゆくまで、老衰するまで堪能して欲しいのだ。
ただ、この弟はどこかの誰かの様に酷く短気な面がある。
そのため、この世界で息がし辛くなる時があるだろう。
城戸はそんなリュウガのためにいつでも受け入れてやれるようになりたいと思っていた。

「じゃ、食った後は勉強でもすっか」
「ぇえーーーー・・・・・・・」

心底嫌な顔をするリュウガを城戸は睨めつける。

「あのなぁ、俺はただでさえ勉強が遅れてるの。それを取り戻さなきゃいけないし、大検受ける予定にしてんだからな」
「記憶があるなら、んなこといらねーだろうが」
「・・・・・・痛いところ突くな」

俺の学力元から低いこと知ってんだろ?
悔しそうにこちらを見る城戸に、少しつまらなそうな顔で「知らないね」とそっぽを向いた。
その後もあーでもないこーでもないと喋りながら朝食を取り、使った食器を二人で片付ける。
簡易棚に食器を戻せば、先程まで朝食を並べていたテーブルに、城戸は早速筆記用具を置いた。
どうやら先ほど言ったことは本当だったらしい。

「本当に勉強かよ?」
「あったりまえだろ」

面倒臭そうに言うリュウガに頷くが、でも、と、城戸は続けた。

「その前に、先生の回診だ」




「・・・はい、これで終わり」
「ありがとうございます」
「・・・・・・」
「リュウガ」
「・・・・・あざーっす・・・・」

消毒とガーゼの張替えをしてくれた担当医に礼を述べ、城戸の診察も終えると担当医は「じゃぁ、また夕方に」と笑いながら出て行った。

「・・・・・リュウガがいるの、文句言われるかと思ったけど、大丈夫だったな」
「ま、な・・・・」

城戸は知らない。
何故、この部屋に居られるのかの理由を。
しられたく無い、秘密。
病院側も配慮を設け、必要以上に触れてこない。
つまり、腫れ物扱いなのだ。

「それより、勉強すんだろ」
「ん?そうだな」

これ以上考えたくなくて、リュウガは矛先を変えた。







先程まで朝食を並べていたテーブルに今度は勉強道具を並べて、城戸はうんうんと唸っていた。

「なーリューガー・・・・・」
「ん?」
「これの方程式って・・・なんでこーなんの?」

言われた問題は、ごくごく普通の方程式。
リュウガの眉間に若干のシワが寄った。

「なあ、真司。前の時間、数学の成績って幾つだ?」
「元気優良児の花丸男子だぜ!!」

この後、大きなたんこぶを作った城戸だった。




何とか、目的のページまで辿り着き、二人で大きく息をついた。

「終わったぁー・・・・・・」
「あぁー・・・疲れたぁー・・・・」
「だよなー・・・・・何で数学なんてあんだろ?」
「俺はお前に教えるのが疲れたの」
「あっなんだよそれ」

ひっでー!お兄ちゃんを敬え!
誰がおにーちゃんだ!
ぎゃいのぎゃいのわめく。
しかし、二人とも顔は嬉しそうだ。誰もいない室内では、ツッコミもない。
ひとしきり二人でふざけあった後、リュウガの着替えなどを持ってやってきた竜也に「どうしたんだ?」と言われる程、髪がぐちゃぐちゃな二人が居たらしい。



「謹慎取れたら、ちゃんと学校行けよ?」
「・・・・・・」

昼飯を食べた後。
二人がけのソファーに座り食後のお茶を飲んでいると、隣に同じくお茶を持った城戸が座った。
ちらりとリュウガの視線が城戸に向いたが、すぐにまた嵌め込み式のガラス窓に向けられる。

「今しか、無いんだぞ?」

この時間は、今しか味わうことは出来ない。
違う時間線でのリュウガの願いは、ミラーワールドを抜け、現実世界での生。

「・・・・お前だって・・・一緒じゃんか・・・」
「俺は一回味わった」

今しかない時間。
それはリュウガも城戸も同じだ。
リュウガは少しだけ寂しそうに目を伏せる。
確かに願った。
喉から手が出る程、その願いのためなら、誰であろうと倒すと・・・・

「・・・・お前と一緒に学校通ったら、大変そうだよな」
「・・・・なんだよ」

嫌だっていうのかよ?

「いやって言うかな・・・・ぅーん・・・・お前、俺を帰りがけの待ち伏せしそうだし・・・・」
「兄弟ならいいじゃん」
「抱き付いてきそうだし」
「双子なら許される」
「・・・・変態」
「否定しない」
「否定しろやっ!!」

大笑いしながら突っ込んできた、城戸に吊られ、リュウガの口にも笑みが浮かぶ。
リュウガが城戸に執着しているのは既に周りは知っているし、城戸自身も容認している。

「お前はお兄ちゃん離れしなさい」
「だが、断るっ!」
「断んな!!受け取れ!!」
「クーリングオフ!!」
「福祉施設の生活相談課に電話かよ!?」

笑いが絶えない。
こうしている他愛もない会話が、ただただ、嬉しかった。











その夜の時田家の玄関。

「わかったか?」

暗かった玄関の三和土に、泥だらけの靴が入ってきた。

「・・・・リュウガの中学からの出身の奴だ」
「で?」
「絞めた」

黒髪の短髪は、バサバサとなり、所々に土が着いて、その頬は赤く腫れ、唇には血が滲んでいた。

「有難う」
「礼を言うな。真司を笑う奴は許さない。そうだろ?」

多分喧嘩の際に切れたのだろう。
竜馬の手の甲に一本の切り傷があった。

「・・・・・ああ・・・絶対に許さん」

竜也は竜馬の傷ついた手を持ち上げて、その具合を見る。

「救急箱を用意しておく。風呂が沸いてるから、入ってこいよ」
「ああ、有難う」







「なぁ、真司」
「ん?」
ベッドの中、動き辛いと文句を言ったが、結局城戸の腹部に抱きついたまま寝る体制を選んだリュウガとそれを仕方ない、と受け入れた城戸。
お腹にへばりつくリュウガの布団に隠れた頭をぽすぽすとたたく。

「生きるって・・・・何なんだろ・・・?」
「・・・・・また、難しいな・・・・」

生きる。
死ぬことの反対。

「・・・・何か、言われた?」
「・・・別に・・・・・」
「そっか」

生きること。
あのライダーの戦いの中で、何人が生を望んでいたか。
この不器用な性格の弟も、その一人。

「・・・・生きるって・・・実はそんなに難しいことじゃ、ないと俺は思う」








「リュウガの登校中にタイミング悪くそこに居合わせたようで」

同じ時間帯に登校していた他の生徒から聞いた話。

「・・・・痛っ!」
「悪い・・・・そこで、リュウガはお前がぶっ倒してきた高校生に言われたと」

顔の傷を消毒し、一番ひどい手の甲に消毒薬を塗れば、痛みに竜馬が顔を顰めた。



ーーーー お前のうちって、金持ちなんだって?


ーーーー 病院の個室をずっと借りてるって聞いたぜ?




何故、そうなったか知らない輩からのからかい。
何故、そうなってしまったのか、知っている者への攻撃。

「リュウガは耐えられなかった、か・・・・・」
「お前だって・・・・・・」
今しがた手当てしてもらった手を朱い髪の上へぽんと置いた。
頭に置かれた温もりに、竜也は気付かぬうちに握り込んでいた拳をそっと開くと、一つため息を着く。

「・・・・・すまない・・・・」
「俺たちは、真司が願ってくれたからこうして、生きてる」
「ああ・・・・」

真司の願い。

「前に約束したろ。その願いを心から良かったと思わせてやるために、生きるって」
「・・・・・そうだったな・・・・・・」

それを心から喜んでもらう。
そう、竜也と竜馬は決めた。





なかったことになった時間軸の中。
龍の姿で空を飛んでいた。
けれど、無かった時間とともに消滅するはずだった命は、城戸真司という一人の願いによって、こうして具現化された。
その代償をただ一人の人間に被せて。
それを後悔するな、というのは無理なのだ。
でも、それを受け入れて生きていかなくてはいけない。

「生きるって・・・・辛いな・・・・」
「そう、だな・・・・・・」







「生きるってさ・・・・辛かったり苦しかったり、悲しかったりするけど・・・・そういった辛いことを経験するから、その分優しさっていうのがどんなものか、わかるんだと思う」
「・・・・・・・」
「そんで、お前にはいっぱい経験して欲しいんだ」
「・・・・・なんで・・・・?」

寂しそうな声。
城戸は布団の上から、ぽんぽんと幼子にするように優しく叩いた。

「そんだけ、この世界は素晴らしいってこと」
「・・・・・・」

望んだ世界。
それが・・・・この世界・・・・


それが・・・・・こんなにも苦しい・・・・・・





生きたいと、そう願った。
誰かを倒して、この手で殺めたとしても、望んだ世界。





死ぬこと。
その意味はまだ分からない。
でも・・・・
生きることは・・・・・・・



少しだけ、分かった・・・・・・・そんな気がした。
















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Pixivにて出した番外編です。<14,7,30>









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