カウンター

蓮真ではなく海真ですのでご注意ください。






48.迂闊な一言









アトリ一階。
定休日である本日は、城戸の休みと重なった。
しかし、城戸はどうやら宿題を出されているようで、先ほどからカウンター席でうんうんと唸っていた。

「うーん・・・・・・」

何を考えているのだろう?
手塚は商売道具の整理と掃除をしていた手を一旦休め、城戸の横から城戸の手元を覗き込んだ。

「あ、手塚君」
「さっきから、何をそんなに悩んでいるんだ?」

あまり悩むと、頭皮と毛髪にくるぞ?
それはいけない。そうなる前に、城戸の悩みを占ってやるか。

「あまり答えが出ないのら、占うか?」
「あ、いやそういった悩みじゃなくて」

ではどんな悩みだ?

「これなんだよ」
「どれどれ?」

城戸から渡された一枚のコピー用紙。
そこにはリストとなって書かれた、言葉が並んでいた。

「お前が好きだ・・・愛してる・・・俺に味噌汁を作ってくれ・・・・何だこれは?」
「愛の言葉リスト」

城戸の言葉に手塚は首をかしげた。

「そのまんま、OREジャーナルの会員にアンケートをとってクリスマスに向けて、告白したい言葉、されたい言葉っつーのを集めたんだよ」
「なるほど」

それでこういう言葉が並んでいるわけか。

「で、城戸はこれのどこに一体悩んでいるんだ?」

城戸の悩む理由。
それは、

「この集めた中から、社員が選んだベスト5って言うのを作るんだ」

女性視点、男性視点の愛の言葉。
そのベスト5を作るため、

「どの言葉がいいのか、よくわかんなくてさ・・・・」
「成程、城戸は女性経験がないと・・・」
「そうじゃないって!!!」






「そ、そりゃー沢山あるって云える訳じゃないけど・・・俺だって1回や2回ぐらい・・・・」

ぶつぶつと愚痴る城戸を置いといて、手塚はもう一度リストを見た。
印が着いてるのが何個か。多分城戸が悩んでつけた丸だろう。

「で、結局城戸はどれがいいと思うんだ?」
「え・・・ああ、俺は・・・」

現実に帰ってきた城戸は手塚の横からリストを覗き込んだ。

「やっぱ、オーソドックスに『好きだ』だと思うんだよ」
「成程」
「で、後は『お前が居ないと、息も出来ない』ってーのがあって、
それもいいなーって思ったんだけど、どうも現実味がなさそうだな〜って感じで」
「ほぅほぅ」

確かに、少し漫画やゲームのようなセリフではある。

「後は・・・これかな」
「『寒いから温めてくれ』」
「これだったら、真冬のクリスマスでも使えるかなって」
「そうだな・・・」
「あとはー・・・・」
「やはり、これは城戸の言ってみたい言葉、ということになるのか?」

説明を中断し、聞いてみた疑問。
その言葉に、城戸の顔は一気に赤くなった。
どうやら、言ってみたい言葉でもあるようだ。

「だ、だってお、俺だだだってっててお、男なんだぞ!!」

「・・・落ち着け、そこまで焦るな」

愛の言葉でここまで慌てるようでは多分、本番は目も当てられないだろう。
手塚はその様子を想像し、一人頷いた。
何か、手塚に馬鹿にされている気がした城戸は、手塚からリストを奪い、背を向けた。
どうやらむくれてしまったようだ。
無言の背中となった城戸に、手塚はどうしたものかとひとつ首をひねる。

「いいさいいさ、どうせ俺は女の子と付き合った事だって、手をつないだ事だってないですよーだ」

いじけた言葉に苦笑を浮かべ、手塚は城戸の耳に口を近付けた。

  

 ――― 好きだ



驚いて、こちらをばっと振り返った城戸の目の前には悪戯を仕掛ける子供のような顔をした手塚がいた。




 ――― お前が居ないと、息も出来ない



そのまま紡がれる言葉。
みるみるうちに顔が耳が赤くなっていくのを感じる。



 ――― 寒いから温めてくれ



そういって、今度は抱きついてきた手塚。

「て、っ手塚ッ///!?」

あまりの突然の出来事に頭の中がパニックに陥る。
こうなると人間、思考なんぞといったものは全てフリーズアウトだ。
強制終了させて再起動かけたところで、再び稼働する見込みもなく、後は修理屋に担いで飛び込むほかなし。 
城戸は慌てて手塚か離れようと、その肩に手を置くが、手塚はそれを悟り、更に強く城戸を掻き抱いた。

「て・・・てづ・・・ッ///」

一層きつくなった抱擁にもう何と言えばいいのか分らない。




 ――― 愛してる
   



「――――ッ///!!」

その言葉はリストの中で、城戸が一番に選んだ言葉であった。
そのまま暖かい物が口を塞ぐ。
これでは文句もパニくった言葉も唸り声も悲鳴も上げられないではないか。
色々な感情がごちゃまぜになった城戸はせめてもの報復に、掴んでいた手塚の肩を強く握りしめたのだった。






















 〜〜〜〜〜〜〜〜 おまけ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「これは言いたい言葉であって聞きたい言葉じゃないの///!!」
「そうか?どちらも似たようじゃないか」

しれっと再び商売道具の掃除と整理を再開した手塚に城戸は顔を真っ赤にしながら怒鳴る。

「手塚!!」
「城戸」

どこ吹く風の相手にさらに声を荒げようとすると静かに名前を呼ばれた。
訝しむと、手塚は自身の唇を指した。

「濡れてるぞ?」
「――――――――ッ///!!!!!!」






 城戸真司、完全にノックアウト。勝者、手塚海之。

 見事なゴングが鳴りっ響いたのだった。













戻る


*******************************************************************************

ここ最近、手塚と城戸のが率高いな〜と、イメージを受けた狼。(気のせい)
よし、勝手に『手塚祭』開催しちまえ〜。
と、作られたものです。

やっぱ手塚と絡めると甘いものが簡単にできるな。うむり。