カウンター


4.笑顔の理由






病院からの不穏な連絡に、取る物もとりあえず慌ててアトリを出た。
病院につき、様態を聞くが余り芳しくなく、何も出来ない自分に酷く惨めさを感じた、
そして処置の甲斐が合ったのか、なんとか波を乗り切った彼女は再び深い眠りへと着いた。


アトリに帰る頃には既に日付は変わっていた。


きっと同居人は既に寝ているだろう。
今日は平日で明日も平日だ。
普通の会社員なら既に寝ている時間。


部屋の扉を開く。
あまり音をたたせないよう開くのは、相手のためか、自分が帰ってきたことを感ずかれたくないためか、


扉を開ききると、珍しく同居人のカーテンが閉め切ってあることに気が付く。


「・・・・?」


不思議には思ったが自分には関係がないため放っておく。


そして自分のスペースのカーテンを開く。
すると。


―― すーすー・・・・


「・・・何なんだ?」


思わずつぶやかれた言葉。


自分のベッドで寝ていたのは、もう片方で寝ているはずだった同居人。


何故こいつが自分のスペースで寝ているのだろう?
疲れた頭ではあまり考えがまとまらず、そのもどかしさに気がイラついてくる。


このまま頭をぶん殴り、叩き起してやろうか。
それとも枕を引っこ抜いて顔に押し付け全体重でも掛けてやろうか。


自分の拳が自然と握りこまれる。


日々の戦い、病院からの連絡。
きっと・・・いや、自分の中では既に限界なのだろう。


今、目の前で何も不安も心配もない顔をした同居人が、羨ましく感じた。






「ん〜・・・・れーん・・・・」






不意に、笑った寝顔。


がくっと膝の力が抜け、思わず地面に座り込んでしまった。




「城戸・・・・」




思わず伸ばした手に、延ばされ握られた暖かな掌。




「れぇーん・・・」
「・・・城戸」



笑みのまま呼ばれる名前。





縋り付きたい程に弱っている自分。


城戸、お前はどんな夢を見ているんだ・・・?














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シリアスとも言えないけど甘くもない蓮真が好きです。