35.もし、叶うなら


カウンター




「何だと?」

「もしライダーの願い以外で願いが叶うのなら、秋山、お前は何がいい?」



それは朝のワイド番組
本日はアトリが休業で、手塚は城戸があわただしく出かけた後、何をするでもなくテレビを見ていた
その横で、秋山は新聞を広げ、株価のチェックを行っていた

『もし、何か願いが叶うのなら、皆さん何をお願いしますか?』

それは、もう直ぐやってくる七夕への願い

『私は、健康ですかね?』
『なら、僕はお金ですかね?』

テレビの中のコメンテイター達は、あーでもないこーでもないと、それぞれが話す
そんな中、手塚はテレビを真剣に見ていた

「何がそんなに楽しいんだ・・・?」
「秋山、夢が無いな」

一通り新聞を読み終わり、秋山は真剣にテレビを見る手塚に溜息をついた
そんな秋山に、手塚はいつもの表情で秋山を見やった

「面白いとは思わないか?」
「何がだ?こんなもの、ただの迷信だろうが。それに、人の幸せにかこつけて、自分の願いを叶えて貰おうとするのは図々しいことこの上ないな」

「長いセリフご苦労」

「手塚ぁあ!!!」




「で、お前は何が面白いんだ?」

持っていた新聞を手塚に向かって投げつけた秋山は、先ほどよりは怒りの静まった表情で、手塚に訪ねた

「人は誰しも叶えたい願いがある。面白いとは思わないか?」

手塚の言葉に、どこが?と、秋山は眉間にしわを寄せた

「つまりは、誰しもライダーになる資質を持ち合わせているんだ」

人は皆、欲望を持ち合わせている
願いというのは、綺麗な言葉なだけで、その実態はただの欲だ

「それが何だと言うんだ?」
「その中で、俺達がカンザキシロウによって選ばれた」
「運命か?」

秋山の小馬鹿にしたような声に、手塚は小さく笑いながら「そうかもな」と頷いた

「秋山は何か願いは無いのか?」
「何だと?」

このライダーの戦いは、それぞれが通常では叶えられないような願いを背負って戦っている

「ふざけているのか?」
「違う」
「なら、知れたことだ」
「そういうわけではなく、もしライダーの願い以外で願いが叶うのなら、秋山、お前は何がいい?」

ライダーの戦いを除いた願い
つまり今現在の欲

「特に無いな」

そっけなく応える秋山

「そうか?俺はあるんだがな」
「・・・・」

何だ、とは聞き返さず、ただ視線だけを向ける秋山
手塚はテレビ画面を一瞥し、再び秋山を見やると口を開いた



「俺の願いは―――――」









そして、七夕は過ぎ、一夜の夢のごとく、手塚は死んだ

「・・・・手塚」

酷く落ち込む城戸を前にして、秋山は思い出していた


『秋山は何か願いは無いのか?』

『何だと、ふざけているのか?』

『違う』

『なら、知れたことだ』

『そういうわけではなく、もしライダーの願い以外で願いが叶うのなら、秋山、お前は何がいい?』

『特に無いな』

『そうか?俺はあるんだがな』

『・・・・』





手塚

『俺の願いは―――――』





お前の願いは・・・・叶ったぞ





『俺の願いは、誰かの心に深く刻み込まれることだ』





お前は、幸せか・・・?
手塚







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なんかお題だと、手塚さんの死にネタが多い気が・・・。