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33.無理な約束










手塚の死。
城戸は、酷く不安定だった。











「城戸」
「ん?」

夜の街。
仕事の都合で遅くなった城戸を、少女が心配し秋山が仕方なく迎えに来た。
その帰り、見つけてしまった子猫のダンボール。

「あ!!」
「・・・・」

ダンボールの中の毛玉は可愛らしく、みうみうと鳴いていた。
そのままほって置けるはずもなく。

「あ、ゆいちゃん?」

携帯電話で猫を連れて帰ることを了承してもらう。





その帰り道。
城戸がダンボールを抱えて歩く。
国道沿いの道では、既に日付が変わるという時間帯でも車の通りは尽きることが無い。

「よかったなぁー、あったかいところで眠れるぞー」

 みう

その様子を、何も言わずにただ見ている秋山。
そのまま暫く歩く。

「なぁ、蓮」
「何だ?」

徐に城戸が口を開いた。

「昔俺さ、こいつみたいな猫、飼ってたんだ」
「ほぉ」
「人懐っこくて、俺の後ずっと付いてきて。猫の癖に家じゃなくて人に付いてるって感じだった」
「・・・・城戸?」

秋山は、懐かしそうに話す城戸の様子に違和感を感じた。

「ある日さ、両親も出かけて、俺も友達んちに遊びに行ったんだ。家に猫いるから窓は全部鍵閉めて、ドアも鍵閉めた」
「・・・・」

器用にダンボールを片手で抱え、片手で眠っている子猫を撫でる城戸は、懐かしむように、泣きそうな顔をしていた。

「なのにさ、帰ったらそいつ居なくなってんの」

大好きだった一番の親友。
外は危ないから、決して外に出ないようにと、家の鍵を全て閉めておいたのに。

「見つかったのか・・・?」
「・・・・・見つかった、でもさ、遅かった」

家の窓は一つだけ開いていた。
その窓の鍵の周辺には、何度も引っかいた爪の後が付いていた。

「・・・先生が言うには、車にぶつかってしまったんじゃないかって・・・・」
「・・・・」
「しかもさ、その見つかった場所がさ・・・友達の家の近く、俺が行く時に通った道だったんだ」

帰りは本屋に寄るから、来た時と違う道を通り、駅の方面へと向かった。
来た道は、帰るときには通らなかった。

そして、居ないことに気づき、慌てて家の周辺を探し、家族総出であっちこっちに聞きに回った。

見つけたのは父だった。
その腕に抱かれた親友は、ぐったりとし決してその目を開けず、動くことさえもしなかった。

見つかった場所が、自分の通った道であったことを聞かされ、どれ程後悔しただろうか。
何故、自分は本屋に行ったのだろう?
そのまま真っ直ぐ自分の家に帰ればよかったのではないだろうか?

「城戸・・・」
「その時にさ、俺思ったんだ。もう絶対に猫は飼わないって」

こんなに苦しい思いをするのなら、もう何も飼わない。
そう決めた。

「命ってあっけない、簡単に死んじまう」
「そうだな・・・」
「俺や蓮だって」

仮面ライダーとして戦う日々。
何時も、死とは背中合わせの世界。

「確かにそうだ。だがな、城戸」
「・・・・?」

眠る子猫の箱を抱えた城戸は、立ち止まり秋山を見た。
秋山はそのまま歩き、立ち止まる。

「俺は死なない、絶対にな」
「・・・・」
「城戸、お前は何のためにライダーになった?」
「・・・・」
「お前は馬鹿馬鹿しい意思でライダーになったんだろう?」
「馬鹿って・・・言うな」
「なら」

振り返った秋山は、城戸の目の前に歩み寄ると、城戸を抱きしめた。

「なら、その意思を貫き通せ」
「・・・・」
「死ぬな城戸」




「絶対に・・・死ぬな」
「蓮・・・蓮ッ!!」




触れ合った唇は温かく、血が流れているんだ、生きているんだ、と実感させられた。




















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く・・・くらいなぁー;
最初は暖かく甘い方向に進ませたかったんだけどなー・・・;
最初の自分は何処に行ったんだろうか?



この時期、道端に置き去りにされてしまう子猫や子犬がとても多いです。
子猫や子犬が生まれて困ってしまったとおっしゃる方、
どうか、捨てることは思いとどまってください。
そして、その仔に飼い主を探してあげてください。
面倒臭くても、大変でも、どうか探してあげてください。

捨て犬、捨て猫、どうか、保健所で亡くなる動物の数が減りますように。