29.変化の自覚


カウンター


二人してアトリに住むことになって数日。

「朝はラジオだろう!!」
「いや、テレビだ」

秋山と城戸の二人は朝、何を聞くのか見るのかと喧嘩をおっぱじめていた。

「私達はどちらでもいいけど?」
「ねぇ」

そんな二人の様子を少々呆れながら見ている女性陣。
きっかけは二人が起き出して朝食を取るためにリビングにやってきた時。
城戸は、リビングにあったラジオをつけ、秋山はリモコンでテレビの電源を入れたのだ。
二つの異なる音は、両者とも聞きづらくすることになり、

「城戸、ラジオを消せ」
「何言ってんだよ。お前こそテレビ消せよ」

と、いった感じで今に至る。

「あのなぁ〜、朝のラジオで『○木ひとみのいってらっしゃい』を聞いてから出社!世の中のサラリーマンの人達には一般常識なの!!」
「朝のニュースはテレビだろう!ラジオのニュースは情報が襲い!!」

結局。

「じゃぁ。月水金にラジオで火木土日にテレビ、ということで決定ね」

と決まった。





そして、戦いは終わり新たな時間が流れ始めた。

月曜の朝。秋山は目を覚まし食パンを2枚、トースターに突っ込むと、朝刊を取りに玄関に足を向けた。
そしてそれと同時に、何気なくラジオに手を伸ばし、ふと手を止めて小さく笑みをこぼした。
あの戦いを終え、新たに始まった時間の中、秋山は覚えていた。そして、秋山同様記憶を持っていた城戸を探し出して今、一緒に住んでいる。
だが、ラジオとテレビについてはあの時以来なんら話しをしていない。
だが、今はもう月曜の朝に早朝からやっている経済ニュースを聞くのが癖になってしまった。
誰かの意見に流されたり感化されるような自分は以前ではありえなかったというのに。

「変わったな・・・」

そう、変わったのだ。自分は。
あの時間の中で。

そう思うと、変な可笑しさがこみ上げてくる。
秋山は、そのままラジオをつけると朝刊を取りに玄関へと向かった。




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すみません。きっとラジオのニッポン放送(1242)を、
普段から聞いてる方しか分からないのでは?
という内容になってしまっています;。
それに、黒木○とみさんはもう「いってらっしゃい」を終え、
今は「おかえりなさい」の番組でした。
城戸はお金が無くてテレビという高いものに手を出せなかったんだと思います。
比較的安いラジオを常に聞いていたという勝手な裏設定で・・・。