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26.早く逢いたい




朝起きて、挨拶。

「おはよう」
「・・・・」

帰ってくるのは無言。分かっているから別に気にしない。

「じゃ、行ってきます!」
「あぁ」

ここで小さく返事。これは少し嬉しかったり。

でも、

「真司ぃ〜お前、何時まで残業する気だ〜・・・?」
「す・直ぐに終わらせますからぁ〜!!」

修業時刻は一応5時半。
今は8時。
残業もいいところ。
朝、8時に出てきたから今12時間経過したことになる。

でも、

「お、終わった〜・・・」
「ったく、お前に付き合った俺までかえるの遅くなったじゃねーか」
「ありがとうございます、編集長」
「今度奢れよ?」
「え!?・・・あ、あはは・・・そ、そのうちに。じゃ、じゃぁ俺帰りますね!!」
「おう!お疲れさん!」

でも、声が聞けなくても視界に写るだけで俺は嬉しいんだ。

「早く帰らなきゃ」

声が聞こえなくても、見えるだけで。
早く、アイタイよ、蓮。


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ふと見上げた灰色の空。

俺は曇り空が一番嫌いだった。

何故だろう・・・?

雨が降れば別段気にしないと言うのに・・・

そんな時、ふと視界を横切った亜麻色の髪。

思わず振り返ってしまう。



何故だろう、こんなにも無性に逢いたいと思うのは。

相手が誰なのかも、わからないというのに。





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ストーリー2本です。
後半は最終回後の蓮さん。